賃貸借契約 (全15問中14問目)

No.14

借主Aは、B所有の建物について貸主Bとの間で賃貸借契約を締結し、敷金として質料2カ月分に相当する金額をBに対して支払ったが、当該敷金についてBによる質料債権への充当はされていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
平成15年試験 問11
  1. 賃貸借契約が終了した場合、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立たず、Aの建物明渡しはBから敷金の返還された後に行えばよい。
  2. 賃貸借契約期間中にBが建物をCに譲渡した場合で、Cが賃貸人の地位を承継したとき、敷金に関する権利義務は当然にCに承継される。
  3. 賃貸借契約期間中にAがDに対して賃借権を譲渡した場合で、Bがこの賃借権譲渡を承諾したとき、敷金に関する権利義務は当然にDに承継される。
  4. 賃貸借契約が終了した後、Aが建物を明け渡す前に、Bが建物をEに譲渡した場合で、BE間でEに敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然にEに承継される。

正解 2

問題難易度
肢110.5%
肢256.0%
肢314.4%
肢419.1%

解説

  1. 誤り。敷金返還請求権は建物明渡し後に発生するので、建物明渡しと敷金返還とは同時履行の関係に立ちません(民法622条の2第1項)。判例法理(最判昭49.9.2等)として確立されていたものが民法改正により明文化されました。
    よって、借主Aは先に建物の明渡しをしなければなりません。
    賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
    一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
    二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
    家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。
  2. [正しい]。貸主が賃貸借の目的である建物を第三者に譲渡し、建物の新所有者に賃貸人の地位が承継されたとき、元貸主が有していた敷金に関する権利義務は当然に建物の新所有者(新貸主)に承継されます(民法605条の2第4項)。
    よって、元貸主Bが有していた敷金に関する権利義務は当然に新貸主Cに承継されます。
    第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
  3. 誤り。契約期間中に適法に賃借権が譲渡され、建物の借主が変わった場合、借主の地位は新借主に移転します。しかし、元借主が有していた敷金に関する権利義務は、新借主に承継されません(最判昭53.12.22)。新借主の債務まで元借主が預託した敷金で担保するとなると、元借主が不利になるためです。改正民法では、適法に賃借権を譲渡された際にも貸主に敷金の返還義務が生じるとしています(民法622条の2第1項2号)。
    よって、元借主Aの敷金に関する権利義務は当然に新借主Dに承継されるわけではありません。※肢2の貸主の地位の移転と逆なので注意しましょう。
    土地賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転された場合であつても、敷金に関する敷金交付者の権利義務関係は、敷金交付者において賃貸人との間で敷金をもつて新賃借人の債務の担保とすることを約し又は新賃借人に対して敷金返還請求権を譲渡するなど特段の事情のない限り、新賃借人に承継されない。
  4. 誤り。賃貸借契約終了後の建物の譲渡ですから、Eに賃貸人の地位が移転することはありません。Eに賃貸人の地位が移転しないのですから、賃貸借契約が終了した後であっても、敷金に関する契約関係は依然として旧所有者と借主の間にあります。旧所有者と新所有者の合意のみによって、敷金に関する権利義務を新所有者に承継させることはできません(最判昭48.2.2)。
    家屋の賃貸借終了後明渡前にその所有権が他に移転された場合には、敷金に関する権利義務の関係は、旧所有者と新所有者との合意のみによつては、新所有者に承継されない。
したがって正しい記述は[2]です。