宅建試験過去問題 令和7年試験 問6
問6
Aが所有している甲土地についての物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Bが甲土地をAに無断でCに売却し、その後、BがAから甲土地を購入した場合、Cは、Bから甲土地を購入した時点に遡って甲土地の所有権を取得する。
- Dが甲土地につき、Aに無断でDへの虚偽の所有権の移転の登記をした上で、甲土地をEに売却してその旨の登記をした場合において、その後、AがFに甲土地を売却したときは、Fは、Eに対し、甲土地の所有権を主張することができる。
- Gが甲土地の所有権を時効取得した場合、Gはその後にAを単独相続したHに対して、登記を備えていなくても、甲土地の所有権を主張することができる。
- Aが甲土地上の立木の所有権を留保して甲土地をJに売却し、その後、JがKに甲土地及びその上の立木を売却した場合には、Aは、Kに対し、立木の所有権の留保につき登記又は明認方法を備えない限り、立木の所有権を主張することができない。
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正解 1
問題難易度
肢135.1%
肢218.2%
肢329.3%
肢417.4%
肢218.2%
肢329.3%
肢417.4%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- [誤り]。他人物売買を行った売主が、その後、本当の所有者から所有権を取得した場合、特段の約定がない限り、売主の所有権取得と同時にその所有権は買主に移転します(最判昭40.11.19)。本肢のBはAに無断で売却しているため、特約はありません。したがって、Cが甲土地の所有権を取得するのは、BがAから甲土地を購入した時点となります。
売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には、買主への所有権移転の時期・方法について特段の約定がないかぎり、右物件の所有権は、なんらの意思表示がなくても、売主の所有権取得と同時に買主に移転する。
Aを売主、Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合、BがAの無権利について善意無過失であれば、AB間で売買契約が成立した時点で、Bは乙建物の所有権を取得する。(H29-2-2) - 正しい。Dは無権利者であり、実体法上の物権変動がないため移転登記は無効となります。登記には公信力がないので、無権利者Dから甲土地を買ったEもやはり無権利者となり、DからEへの移転登記も無効です。正当の権原によらずに権利を主張する者は民法177条の第三者に該当しないので、真の所有者であるFは、Eに対し登記なくして所有権を対抗できます(最判昭34.2.12)。
一 不動産につき実質上所有権を有せず、登記簿上所有者として表示されているにすぎない者は、実体上の所有権を取得した者に対して、登記の欠缺を主張することはできない。
二 真正なる不動産の所有者は、所有権に基き、登記簿上の所有名義人に対し、所有権移転登記を請求することができる。 - 正しい。時効で不動産を取得した場合、時効完成時に所有者であった者(権利を失う人)には登記がなくても所有権を対抗できます(大判大7.3.2)。このため、GはAに対して登記なしで所有権を主張できます。また、Aを単独相続してその地位を包括的に承継したHに対しても、同様に登記なしで所有権を主張できます。
時効による不動産の所有権の取得は、時効完成時において所有者であった者に対する関係では、登記を必要としない。
- 正しい。立木(りゅうぼく)とは、土地に付着した樹木の集団です。立木は土地と一緒に売買することもできますが、立木だけを売買の対象とすることもあります。木は動かせず、動産のような引渡しができないため、所有権をどう公示するかが問題となります。立木の所有権を公示するためには、立木法に基づく登記又は明認方法(木を削って名前を書く、札を立てるなど)を施すことが必要です。立木の所有権を留保した場合、その所有権を公示しなければ、その後に土地を取得した第三者に対抗できません(最判昭34.8.7)。
土地の所有権を移転するにあたり、当事者間の合意によつて地上立木の所有権を留保したときは、該留保を公示するに足る方法を講じない以上、これをもつてその地盤である土地の権利を取得した第三者に対抗しえないものと解すべきである。
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