宅建試験過去問題 令和2年12月試験 問11

問11

次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 借地権者が借地権の登記をしておらず、当該土地上に所有権の登記がされている建物を所有しているときは、これをもって借地権を第三者に対抗することができるが、建物の表示の登記によっては対抗することができない。
  2. 借地権者が登記ある建物を火災で滅失したとしても、建物が滅失した日から2年以内に新たな建物を築造すれば、2年を経過した後においても、これをもって借地権を第三者に対抗することができる。
  3. 土地の賃借人が登記ある建物を所有している場合であっても、その賃借人から当該土地建物を賃借した転借人が対抗力を備えていなければ、当該転借人は転借権を第三者に対抗することができない。
  4. 借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力が当該土地全部に及ぶ。

正解 4

問題難易度
肢113.0%
肢226.8%
肢320.8%
肢439.4%

解説

  1. 誤り。建物の表示の登記をもって当該借地権を第三者に対抗することができます。借地借家法上では、借地権の対抗要件を「土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するとき」としています。この登記は権利の登記に限られず、表題登記のみであっても「登記されている建物」という条件を満たします(最判昭50.2.13)。
    借地人が借地上に自己を所有者と記載した表示の登記のある建物を所有する場合は、建物保護に関する法律一条にいう登記したる建物を有するときにあたる。
  2. 誤り。借地権の対抗要件は「土地の上に借地権者が登記されている建物を所有すること」ですから、この規定にそのまま当てはめると、借地上の建物が滅失したときは借地権の対抗要件を失うことになります。しかしこのような場合でも、借地権者が、借地上に❶建物を特定するために必要な事項、❷滅失があった日、❸建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示すれば、滅失から2年間は借地権の対抗要件を存続させることができます。滅失から2年経過後は、原則どおり借地権者名義で登記された建物の所有が必要となります(借地借家法10条2項)。
    本肢は、滅失から2年以内に築造していますが、建物の登記を欠いているので借地権の対抗要件は失効します。よって、借地権を第三者に対抗することはできません。
    前項の場合において、建物の滅失があっても、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお同項の効力を有する。ただし、建物の滅失があった日から二年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限る。
    建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、建物が全焼した場合でも、借地権者は、その土地上に滅失建物を特定するために必要な事項等を掲示すれば、借地権を第三者に対抗することができる場合がある。H24-11-2
    乙建物が滅失した場合でも、Bが借地借家法に規定する事項を甲地の上の見やすい場所に掲示したときは、Bは、甲地に賃借権の登記をしていなくても、滅失のあった日から2年間は、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたDに対し、甲地の賃借権を対抗できる。H15-13-2
  3. 誤り。土地の賃借人から当該土地を適法に転貸借した者は、土地の賃借人が借地権の対抗要件を備えていれば、賃借人の借地権を援用して自己の転借権を第三者に対抗することができます(最判昭39.11.20)。転借人が対抗力を備える必要はありません。
    したがって、土地の賃借人が借地上に登記ある建物を有している、すなわち借地権の対抗要件を備えている場合、転借人は、対抗力を備えていなくても転借権を第三者に対抗することができます。
    土地賃借人の有する借地権が対抗要件を具備しており、かつ転貸借が適法に成立している以上、転借人は、賃借人(転貸人)がその借地権を対抗しうる第三者に対し、賃借人の借地権を援用して自己の転借権を主張しうるものと解すべきである。
    建物の所有を目的とする土地の適法な転借人は、自ら対抗力を備えていなくても、賃借人が対抗力のある建物を所有しているときは、転貸人たる賃借人の賃借権を援用して転借権を第三者に対抗することができる。H24-11-3
  4. [正しい]。一筆の土地上に複数の建物がある場合には、少なくとも1つが借地権者名義で登記されている建物であれば、借地権の対抗力が土地全部に及びます(大判大3.4.4)。
    なお、二筆の土地を賃借していて、その一方に借地権者が登記されている建物がある場合には、土地の利用状況等に応じて借地権の対抗力が及ぶかどうかが変わります。単に一方を庭として使っているにすぎない場合には対抗力は及びませんが、一体として利用している場合は借地権が保護されることがあります。
したがって正しい記述は[4]です。