宅建試験過去問題 平成29年試験 問29

問29

次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. 宅地建物取引業者A(甲県知事免許)は、マンション管理業に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとして、マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づき、国土交通大臣から業務の停止を命じられた。この場合、Aは、甲県知事から法に基づく指示処分を受けることがある。
  2. 国土交通大臣は、宅地建物取引業者B(乙県知事免許)の事務所の所在地を確知できない場合、その旨を官報及び乙県の公報で公告し、その公告の日から30日を経過してもBから申出がないときは、Bの免許を取り消すことができる。
  3. 国土交通大臣は、宅地建物取引業者C(国土交通大臣免許)に対し、法第35条の規定に基づく重要事項の説明を行わなかったことを理由に業務停止を命じた場合は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならない。
  4. 宅地建物取引業者D(丙県知事免許)は、法第72条第1項に基づく丙県職員による事務所への立入検査を拒んだ。この場合、Dは、50万円以下の罰金に処せられることがある。

正解 4

問題難易度
肢111.8%
肢220.2%
肢37.3%
肢460.7%

解説

  1. 誤り。指示処分の対象となるのは、宅地建物取引業に関して他の法令に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると判断されたときです。本肢は、マンション管理業に関し、マンション管理適正化法に基づく国土交通大臣からの業務停止を命じられただけなので、宅建業法上の指示処分を受けることはありません(宅建業法65条1項3号)。
    業務に関し他の法令(履行確保法及びこれに基づく命令を除く。)に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるとき。
    Aが、事務所の公衆の見やすい場所に国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなかった場合、Aは甲県知事から指示処分を受けることはあるが、罰則の適用を受けることはない。R3⑫-28-ウ
    宅地建物取引士が都道府県知事から指示処分を受けた場合において、宅地建物取引業者(国土交通大臣免許)の責めに帰すべき理由があるときは、国土交通大臣は、当該宅地建物取引業者に対して指示処分をすることができる。H30-32-1
    宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法に違反した場合に限り、監督処分の対象となる。H23-44-3
    Aの専任の宅地建物取引士が事務禁止処分を受けた場合において、Aの責めに帰すべき理由があるときは、甲県知事は、Aに対して指示処分をすることができる。H20-45-1
    Aが、乙県内で行う建物の売買に関し、取引の関係者に損害を与えるおそれが大であるときは、Aは、甲県知事から指示処分を受けることはあるが、乙県知事から指示処分を受けることはない。H19-36-2
    Aの取締役が宅地建物取引業の業務に関し、建築基準法の規定に違反したとして罰金刑に処せられた場合、甲県知事は、Aに対して必要な指示をすることができる。H18-45-4
    Aの取締役が宅地建物取引業の業務に関するものではないが、脱税し、所得税法に違反したとして罰金刑に処せられた場合、Aは指示処分を受けることがある。H14-39-4
    Aの宅地建物取引士が、乙県の区域内におけるAの業務を行う場合に、宅地建物取引士としての事務に関し著しく不当な行為をして乙県知事から指示の処分を受けたとき、乙県知事は、Aに対しても指示の処分をすることがある。H12-43-3
  2. 誤り。免許権者は、その免許を受けた宅地建物取引業者の事務所の所在地を確知できないときや、その免許を受けた宅地建物取引業者の所在を確知できないときは、公告をし、その公告の日から30日を経過後に、免許を取り消すことができます。ただし、この公告および取消し処分ができるのは、免許権者に限られます。本肢において国土交通大臣は免許権者ではないため取消しはできません(宅建業法67条1項)。
    国土交通大臣又は都道府県知事は、その免許を受けた宅地建物取引業者の事務所の所在地を確知できないとき、又はその免許を受けた宅地建物取引業者の所在(法人である場合においては、その役員の所在をいう。)を確知できないときは、官報又は当該都道府県の公報でその事実を公告し、その公告の日から三十日を経過しても当該宅地建物取引業者から申出がないときは、当該宅地建物取引業者の免許を取り消すことができる。
    宅地建物取引業者C(甲県知事免許)の事務所の所在地を確知できないため、甲県知事は確知できない旨を公告した。この場合、その公告の日から30日以内にCから申出がなければ、甲県知事は法第67条第1項により免許を取り消すことができる。H26-44-ウ
    甲県知事は、Aの事務所の所在地を確知できないときは、直ちにAの免許を取り消すことができる。H20-45-2
  3. 誤り。国土交通大臣免許の宅地建物取引業者が宅建業法の一定の規定に違反し、国土交通大臣が指示処分・業務停止処分・免許取消しをしようとするときは、あらかじめ内閣総理大臣と協議しなければなりません(宅建業法71条の2第1項)。35条違反は、この協議を行うべき規定に含まれます。本肢は「通知」としているので誤りです。
    国土交通大臣は、その免許を受けた宅地建物取引業者が第三十一条第一項、第三十二条から第三十四条まで、第三十四条の二第一項(中略)、第三十五条(中略)、第三十五条の二から第四十五条まで、第四十七条又は第四十七条の二の規定に違反した場合(中略)において、第六十五条第一項(第二号から第四号までを除く。)若しくは第二項(第一号及び第一号の二を除く。)又は第六十六条第一項(第一号から第八号までを除く。)の規定による処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。
    国土交通大臣は、宅地建物取引業者C社(国土交通大臣免許)が宅地建物取引業法第37条に規定する書面の交付をしていなかったことを理由に、C社に対して業務停止処分をしようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議しなければならない。H24-44-4
  4. [正しい]。国土交通大臣や都道府県知事は、所轄地の宅地建物取引業者に対して立ち入り検査をすることができます(宅建業法72条1項)。職員の立ち入り検査を拒んだ場合は、宅建業法違反となり50万円以下の罰金に処せられます(宅建業法83条1項6号)。
    国土交通大臣は、宅地建物取引業を営むすべての者に対して、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で宅地建物取引業を営む者に対して、宅地建物取引業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その業務について必要な報告を求め、又はその職員に事務所その他その業務を行なう場所に立ち入り、帳簿、書類その他業務に関係のある物件を検査させることができる。
    次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

    第五十条の十二第一項、第六十三条の二第一項(第六十三条の三第二項及び第六十四条の十八において準用する場合を含む。)又は第七十二条第一項若しくは第二項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
    宅地建物取引業者D(丁県知事免許)は、法第72条第1項の規定に基づき、丁県知事から業務について必要な報告を求められたが、これを怠った。この場合、Dは50万円以下の罰金に処せられることがある。R1-29-エ
    Aは、乙県内の業務に関し、甲県知事又は乙県知事から報告を求められることはあるが、乙県知事から必要な指示を受けることはない。H25-42-4
    宅地建物取引業者(甲県知事免許)が、乙県内で宅地建物取引業を営んでいる場合、乙県知事は、取引の業務について必要な報告を求めることができるが、当該宅地建物取引業者の事務所に立ち入り、帳簿の検査をすることはできない。H14-44-4
したがって正しい記述は[4]です。