宅建試験過去問題 平成22年試験 問5

問5

AはBから2,000万円を借り入れて土地とその上の建物を購入し、Bを抵当権者として当該土地及び建物に2,000万円を被担保債権とする抵当権を設定し、登記した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. AがBとは別にCから500万円を借り入れていた場合、Bとの抵当権設定契約がCとの抵当権設定契約より先であっても、Cを抵当権者とする抵当権設定登記の方がBを抵当権者とする抵当権設定登記より先であるときには、Cを抵当権者とする抵当権が第1順位となる。
  2. 当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。
  3. Bの抵当権設定登記後にAがDに対して当該建物を賃貸し、当該建物をDが使用している状態で抵当権が実行され当該建物が競売された場合、Dは競落人に対して直ちに当該建物を明け渡す必要がない。
  4. AがBとは別に事業資金としてEから500万円を借り入れる場合、当該土地及び建物の購入代金が2,000万円であったときには、Bに対して500万円以上の返済をした後でなければ、当該土地及び建物にEのために2番抵当権を設定することはできない。

正解 4

問題難易度
肢19.1%
肢210.7%
肢315.2%
肢465.0%

解説

  1. 正しい。同一不動産に複数の抵当権が設定されている場合の順位は、設定契約の先後ではなく、登記の先後で決することとなります(民法373条)。本肢では、Cを抵当権者とする抵当権設定登記が先ですから、Cの抵当権が第1順位となります。
    同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による。
  2. 正しい。抵当権には物上代位性があるので、抵当権の目的物が譲渡もしくは滅失し、財産的価値が売買代金、損害賠償請求権又は損害保険金等に姿を変えた場合、抵当権の効力はそれらの上に存続します(民法304条1項民法372条)。よって、火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても抵当権を行使することができます。なお、この場合、Aが火災保険金を受領する前に差押えをすることが必要です。
    先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
    第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
    抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。H17-5-3
    Bが、BのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し、対抗要件を備えた後は、Cが当該第三者に弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。H15-5-1
    Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは、Aは、その代金債権に対して、払渡し前に差押えをしないで、先取特権を行使することができる。H12-3-3
  3. 正しい。競落人に対して賃借権を対抗できるか否かは、1番抵当権が設定される前に、賃借権の対抗要件を満たしているかどうかで判断します。抵当権設定前に建物の引渡しが済んでいれば、賃借人Dは競落人に賃借権を対抗できますが、Dの賃貸は抵当権設定登記後なので対抗できません。
    Dのような競落人に建物の賃借権を対抗できない借主を保護するために「建物明渡猶予制度」があり、次の物件を探す時間を確保するため、建物の明渡しが6ヶ月猶予されます(民法395条1項)。直ちに明け渡す必要がないので本肢は適切です。
    抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
    本件抵当権設定登記後にAC間で賃貸借契約を締結し、その後抵当権に基づく競売手続による買受けがなされた場合、買受けから賃貸借契約の期間満了までの期間が1年であったときは、Cは甲建物の競売における買受人に対し、期間満了までは甲建物を引き渡す必要はない。R3⑫-10-3
    抵当権が実行されて、Dが甲建物の新たな所有者となった場合であっても、Cは民法第602条に規定されている短期賃貸借期間の限度で、Dに対して甲建物を賃借する権利があると主張することができる。H20-4-2
  4. [誤り]。BとEの被担保債権の合計は2,500万円となり購入額の2,000万円を上回りますが、抵当権の被担保債権の額が抵当権目的物の購入額や時価を上回っていても問題ありません。よって、AはBに500万円を返済しなくても、Eのために2番抵当権を設定することができます。
したがって誤っている記述は[4]です。