宅建試験過去問題 平成22年試験 問6

問6

両当事者が損害の賠償につき特段の合意をしていない場合において、債務の不履行によって生じる損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害のうち、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたものに限り、賠償請求できる。
  2. 債権者は、特別の事情によって生じた損害のうち、契約締結当時、両当事者がその事情を予見していたものに限り、賠償請求できる。
  3. 債務者の責めに帰すべき債務の履行不能によって生ずる損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始する。
  4. 債務の不履行に関して債権者に過失があったときでも、債務者から過失相殺する旨の主張がなければ、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を考慮することはできない。

正解 3

問題難易度
肢18.0%
肢214.2%
肢363.2%
肢414.6%

解説

  1. 誤り。債務不履行によって通常発生する損害であれば、契約締結当時、両当事者がその損害発生を予見していたか否かにかかわらず損害賠償を請求することができます(民法416条1項)。
    債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2. 誤り。特別の事情によって生じた損害は、契約締結当時、当事者がその事情を予見していた場合の他にも、予見すべきであったと認められるときにも損害賠償請求の対象となります(民法416条2項)。
    特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
  3. [正しい]。履行不能に基づく損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時からその進行を開始します(最判平10.4.24)。
    契約に基づく債務の履行不能による損害賠償請求権の消滅時効は、本来の債務の履行を請求し得る時から進行する。
  4. 誤り。債務の不履行に関して債権者に過失があった場合、裁判所は、損害賠償の責任及びその額を定めるに当たり、債権者の過失を考慮することができます。なお、これは債務者から過失相殺する旨の主張の有無を問いません(民法418条最判昭43.12.24)。
    債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。
    民法第四一八条による過失相殺は、債務者の主張がなくても、裁判所が職権ですることができるが、債権者の過失となるべき事実については、債務者において立証責任を負う。
    Bが、Aの過失を立証して、過失相殺の主張をしたとき、裁判所は損害額の算定にその過失を考慮することができる。H14-7-2
したがって正しい記述は[3]です。