賃貸借契約(全20問中12問目)

No.12

土地の転貸借に関する次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく右土地を他に転貸しても、転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が民法第612条第2項により賃貸借を解除することができない場合において、賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、これが賃借人の賃料不払等の債務不履行があるため賃貸人において法定解除権の行使ができる時にされたものである等の事情のない限り、賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず、したがって、転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することはできないものと解するのが相当である。
平成27年試験 問9
  1. 土地の賃借人が無断転貸した場合において賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できないときであっても、賃貸借契約を合意解除したときは、賃貸人は転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することができる。
  2. 土地の賃貸人が転貸借について承諾を与えた場合には、賃貸人は、無断転貸を理由としては賃貸借契約を解除することはできないが、賃借人と賃貸借契約を合意解除することは可能である。
  3. 土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。
  4. 土地の賃借人が無断転貸した場合、転借人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約が合意解除されたとしても、賃貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある。

正解 1

問題難易度
肢165.7%
肢28.5%
肢316.4%
肢49.4%

解説

  1. [誤り]。判決文において、「賃貸人が賃借人(転貸人)と賃貸借を合意解除しても、… 賃貸人は、転借人に対して右合意解除の効果を対抗することができず…」としているため、本肢は誤りです。民法で明文化されています(民法613条3項)。
    賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
    建物の転貸借がされている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知した日から6月を経過することによって、転貸借契約は終了する。R3⑫-12-3
    Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。R2⑫-6-1
    AがBの債務不履行を理由に甲建物の賃貸借契約を解除した場合、CのBに対する賃料の不払いがなくても、AはCに対して、甲建物の明渡しを求めることができる。H28-8-3
    BがAの承諾を得て甲土地を月額15万円の賃料でCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行で解除されても、AはCに解除を対抗することができない。H26-7-3
    Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除したために当該賃貸借契約が終了した場合であっても、BがAの承諾を得て甲建物をCに転貸していたときには、AはCに対して甲建物の明渡しを請求することができない。H25-11-2
    Aが、Bとの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、Cに対して、合意解除の効果を対抗することができない。H23-7-3
    AがBの承諾を受けてDに対して当該建物を転貸している場合には、AB間の賃貸借契約がAの債務不履行を理由に解除され、BがDに対して目的物の返還を請求しても、AD間の転貸借契約は原則として終了しない。H18-10-2
    AB間で賃貸借契約を合意解除しても、転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り、賃貸人Aは、転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。H16-13-3
    賃貸人AがAB間の賃貸借契約を賃料不払いを理由に解除する場合は、転借人Cに通知等をして賃料をBに代わって支払う機会を与えなければならない。H16-13-4
  2. 正しい。賃貸人が承諾を与えていた場合、無断転貸を理由として賃貸借契約を解除することはできません。しかし、合意解除することは可能です。
  3. 正しい。賃借人が無断転貸をした場合でも、賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは賃貸借契約を解除できません(最判昭28.9.25)。
    また、賃料の不払いがあった場合でも、賃貸人において法定解除権の行使ができると認められる事情のない限り、賃貸借契約を解除できません(最判昭44.11.27)。
    賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。
    建物所有を目的とする土地賃借人が、(中略)遅滞の状態の解消への過程にあつて、そのための努力が払われていた以上、賃貸借契約の基礎たる相互の信頼関係が破壊されているものとはいえず、このような特段の事情のもとにおいては、賃貸人が、賃料不払を理由として賃貸借契約を解除することは許されない。
  4. 正しい。無断転貸であっても「転貸について賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとき」には、合意解除された後に、転借人は賃貸人からの明渡し請求を拒絶できることがあることを示しています。
したがって誤っている記述は[1]です。