債権総則(全37問中9問目)
No.9
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された場合におけるBのAに対する代金債務(以下「本件代金債務」という。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。令和元年試験 問7
- Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。
- Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。
- Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。
- Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。
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正解 1
問題難易度
肢162.8%
肢27.8%
肢38.0%
肢421.4%
肢27.8%
肢38.0%
肢421.4%
分野
科目:1 - 権利関係細目:7 - 債権総則
解説
- [誤り]。受領権者以外の者にした弁済でも、債権者がその弁済により利益を受けた限度において有効となります(民法479条)。本肢は、Cが債権者であるAに代金を引き渡しているので、Bに過失があったとしてもAが受領した額を限度としてBの弁済は有効となります。
前条の場合を除き、受領権者以外の者に対してした弁済は、債権者がこれによって利益を受けた限度においてのみ、その効力を有する。
- 正しい。Dのような「受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り有効となります(民法478条)。Bは善意無過失ですからDに対する弁済は有効となり、代金支払債務は消滅します。
【参考】
受領権者としての外観を有する者の典型例として、債権者の代理人を称する者、表見相続人、他人の預金通帳と印鑑を所持している泥棒などがあります。受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。
- 正しい。Eのような「受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り有効となります(民法478条)。Bは善意無過失ですからEに対する弁済は有効となり、代金支払債務は消滅します。
- 正しい。売買契約は双務契約であり、双務契約の債務は同時履行の関係にあります。よって、Bは同時履行の抗弁権を主張して、Aへの代金支払いを拒むことができます(民法533条)。
双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。(R6-4-3)請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。(R6-5-3)Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。(H29-5-1)請負契約の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負人から履行の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。(H29-7-3)Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。(H21-8-3)Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。(H18-8-3)動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。(H15-9-1)
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