債権総則(全37問中27問目)

No.27

債権の譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成19年試験 問9
  1. 指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で按分した金額の弁済請求しかできない。
  2. 指名債権の性質を持つ預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡については、ゴルフ場経営会社が定める規定に従い会員名義書換えの手続を完了していれば、確定日付のある債権譲渡通知又は確定日付のある承諾のいずれもない場合でも、ゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗できる。
  3. 契約時点ではまだ発生していない将来債権でも、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができ、譲渡時点でその債権発生の可能性が低かったことは譲渡の効力を直ちに否定するものではない。
  4. 指名債権譲渡の予約契約を締結し、この予約契約締結の事実を確定日付のある証書により債務者に通知していれば、予約の完結によりなされる債権譲渡の効力を債務者以外の第三者に対抗することができる。

正解 3

問題難易度
肢15.8%
肢210.6%
肢361.4%
肢422.2%

解説

  1. 誤り。債権譲渡の第三者対抗要件は、①譲渡人から債務者への通知、②債務者の承諾のいずれかを確定日付のある証書によってすることです(民法467条2項)。債権が二重に譲渡された場合は、確定日付のある債権譲渡通知が先に到達した側が、債権の取得を主張できるというのが原則です(最判昭49.3.7)。では、本肢のように同時に到達にしたケースではどうなるのかというと、どちらの譲受人も、債務者に対して全額の弁済を請求することができます。債務者は、既に一方に弁済している等の事情がある場合を除き、債権譲渡の優劣が付かないことを理由に弁済を拒むことはできません(最判昭55.1.11)。
    指名債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互の問の優劣は、確定日付ある通知が債務者に到達した日時又は確定日付ある債務者の承諾の日時の先後によつて決すべきである。
    指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各譲受人は、債務者に対しそれぞれの譲受債権全額の弁済を請求することができ、譲受人の一人から弁済の請求を受けた債務者は、他の譲受人に対する弁済その他の債務消滅事由が存在しない限り、弁済の責を免れることができない。
    Aが貸付金債権をDに対しても譲渡し、Cへは確定日付のない証書、Dへは確定日付のある証書によってBに通知した場合で、いずれの通知もBによる弁済前に到達したとき、Bへの通知の到達の先後にかかわらず、DがCに優先して権利を行使することができる。H15-8-3
  2. 誤り。ゴルフクラブ会員権の法律関係は、ゴルフクラブと会員との債権的契約関係であることが一般的です。ゴルフクラブ会員権を債権として考えてみると、ゴルフ場経営会社による会員名義書換えの手続き完了は譲渡に関して債務者の承諾とみなせるので、ゴルフクラブ会員権の譲受人は、ゴルフ場経営会社に対しては債権の取得を対抗できます。しかし、債権譲渡を債務者以外の第三者に対抗するには、①譲渡人から債務者への通知、②債務者の承諾のいずれかを確定日付のある証書によってすることが必要ですから、それらがなければゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗できないことになります(民法467条最判平8.7.12)。したがって記述は誤りです。
    債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
    2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
    預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡をゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗するには、指名債権の譲渡の場合に準じて、譲渡人が確定日付のある証書によりこれをゴルフ場経営会社に通知し、又はゴルフ場経営会社が確定日付のある証書によりこれを承諾することを要し、かつ、そのことをもって足りる。
    債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知し、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができず、その譲渡の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。R3⑩-6-4
    AがBに対して債権譲渡の通知をすれば、その譲渡通知が確定日付によるものでなくても、CはBに対して自らに弁済するように主張することができる。H23-5-2
    AがBに対する代金債権をDに対しても譲渡し、Cに対する債権譲渡もDに対する債権譲渡も確定日付のある証書でBに通知した場合には、CとDの優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知がBに到着した日時の先後で決まる。H23-5-4
  3. [正しい]。契約時点ではまだ発生していない将来債権であっても譲渡することができます(民法466条の6)。ただし、判例ではその債権が識別できる程度に特定されていることが条件とされています。
    債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。
  4. 誤り。債権譲渡の第三者対抗要件が、確定日付のある証書による通知又は承諾とされているのは、債権者が変わったことを債務者が認識し、それを第三者に対して表示できるようにするためです。債権譲渡の予約契約締結を通知された債務者は、債権者が将来変更される可能性のあることはわかるものの、その後予約が完結されたときに債権者変更の事実を認識することはできません。したがって、予約契約締結を確定日付のある証書で通知しただけでは足りず、民法の規定どおり、債権譲渡の効力が生じる予約の完結時に、改めて確定日付のある証書による通知又は承諾がなければ、債権譲渡を第三者に対抗することはできません(最判平13.11.27)。
    指名債権譲渡の予約についてされた確定日付のある証書による債務者に対する通知又は債務者の承諾をもって,当該予約の完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない。
    本件契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とする場合、Bの担保責任の存続期間を20年と定めることができる。R1-8-2
    買主の売主に対する契約不適合による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。H26-3-3
したがって正しい記述は[3]です。