所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中25問目)

No.25

売買契約の解除に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成17年試験 問9
  1. 買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。
  2. 売主が、買主の代金不払を理由として売買契約を解除した場合には、売買契約はさかのぼって消滅するので、売主は買主に対して損害賠償請求はできない。
  3. 買主が、契約の内容となっていない抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。
  4. 買主が、売主に対して手付金を支払っていた場合には、売主は、自らが売買契約の履行に着手していても、買主が履行に着手するまでは、手付金の倍額を買主に支払うことによって、売買契約を解除することができる。

正解 4

問題難易度
肢113.4%
肢26.4%
肢312.2%
肢468.0%

解説

  1. 誤り。他人の所有物を売買の目的物として契約した場合には、買主がその事実につき悪意であったとしても、売主はその権利を取得して買主に対して引き渡す義務があります(民法561条)。売主がこの義務を果たさないときは、買主は売主に対して契約解除できますし、売主の帰責事由があれば損害賠償請求もできます。
    他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
    他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。R6-1-4
    Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。R3⑫-4-3
    売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。H29-5-4
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aの責めに帰すべき事由により、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。H28-6-1
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。H28-6-2
    甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。H21-10-3
    Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して追完請求をすることができる。H16-10-3
    Aが、B・Cに無断で、この建物を自己の所有としてDに売却した場合は、その売買契約は有効であるが、B・Cの持分については、他人の権利の売買となる。H13-1-1
  2. 誤り。契約の解除権と損害賠償請求権は別個の権利ですから、売買契約を解除しても、相手方に帰責事由があれば損害賠償請求をすることができます(民法544条4項)。
    解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
  3. 誤り。買主は損害賠償請求をすることもできます。購入する不動産に契約内容となっていない抵当権が存在していた場合、抵当権実行前であれば契約不適合責任を追及することになります(民法565条)。その後、抵当権が実行され所有権を失った場合には、契約の引渡し義務が履行されなかったと評価されるため、一般の債務不履行責任に準じて処理されます。債務不履行があった場合には契約解除することができますし、相手方に帰責事由があれば損害賠償請求をすることもできます。
    前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。
    Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら、抵当権が登記されていることを内容に含まない本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。H28-6-3
    Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら、抵当権が登記されていることを内容に含まない本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。H28-6-4
    甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。H20-9-2
  4. [正しい]。手付による契約解除は、相手方が契約の履行に着手する前に行わなくてはなりません(民法557条1項)。したがって、売主自ら契約の履行に着手していても、相手方である買主が着手する前であれば手付解除が可能です。
    買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
    ①の契約において、Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。R2⑩-9-1
    売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を現実に提供して売買契約を解除することができる。H29-5-3
    同年10月31日までにAが契約の履行に着手した場合には、手付が解約手付の性格を有していても、Bが履行に着手したかどうかにかかわらず、Aは、売買契約を解除できなくなる。H16-4-2
    Aが、売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は、Bが履行に着手していないときでも、Aは、本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。H12-7-2
    Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は、Bは、Aに対して、単に口頭で手付の額の倍額を提供することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。H12-7-4
したがって正しい記述は[4]です。