借地借家法(土地)(全26問中10問目)

No.10

A所有の甲土地につき、令和6年10月1日にBとの間で賃貸借契約(以下「本件契約」という。)が締結された場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
平成29年試験 問11
  1. Aが甲土地につき、本件契約とは別に、令和6年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。
  2. 賃借権の存続期間を10年と定めた場合、本件契約が居住の用に供する建物を所有することを目的とするものであるときは存続期間が30年となるのに対し、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは存続期間は10年である。
  3. 本件契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、AもBも期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。
  4. 本件契約が建物所有を目的としている場合、契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、AはあらかじめBに対してその旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。

正解 2

問題難易度
肢110.6%
肢253.7%
肢35.2%
肢430.5%

解説

  1. 誤り。二重に賃貸をした場合は、二重譲渡のときと同じく先に対抗要件を備えた賃借人が他方に対して賃借権を主張することができます(最判昭28.12.18)。賃貸借の目的や契約の先後は関係ないので、必ずしも先に契約したCが優先されるわけではありません。
    借地権の対抗要件は、①賃借権の登記または②借地上に借地権者名義で登記された建物を所有することですから、それを先に具備した方が賃借権を主張できます。仮にBが対抗要件を備えれば、Cに対して土地の明渡しを請求することができます。
    第三者に対抗できる借地権を有する者は、その土地に建物を建ててこれを使用する者に対し直接その建物の収去、土地の明渡を請求することができる。
    Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは甲建物の賃借権をBに対抗することができる。H27-11-3
  2. [正しい]。普通借地権の存続期間は、30年以上と定められています(借地借家法3条)。30年未満の契約は借地借家法の定めよりも借地権者に不利ですから無効となり、存続期間は30年となります。事業用建物であれば存続期間10年の定期借地権とすることもできますが、本肢は居住用建物の建築が目的ですので事業用定期借地権等を選択することはできません。
    一方、資材置場や平置きの駐車場などのように建物の所有を目的としない土地賃貸借契約には借地借家法の適用はありませんから、民法が適用されます。民法では賃貸借の存続期間を最長50年としているので、契約の定めどおり存続期間は10年となります(民法604条)。
    借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。
    賃貸借の存続期間は、五十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、五十年とする。
    借地権を設定する場合において、存続期間を定めなかったときは、その期間は30年となる。R6-11-3
    賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年となり、ケース②の期間は15年となる。R1-11-2
    本件契約において借地権の存続期間を60年と定めても、公正証書によらなければ、その期間は30年となる。H30-11-3
    賃貸借の存続期間を60年と定めた場合には、ケース①では書面で契約を締結しなければ期間が30年となってしまうのに対し、ケース②では口頭による合意であっても期間は60年となる。H26-11-1
    BがAとの間で期間を定めずに甲土地の借地契約を締結している場合には、Cは、いつでも正当事由とともに解約を申し入れて、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できる。H19-13-4
  3. 誤り。一定期間増額しない旨の特約があるときの増額請求を除いて、契約条件にかかわらず、当事者双方から賃料の増減額を請求できます(借地借家法11条1項)。本肢のような地代の自動増額改定特約も有効に定めることができますが、経済事情の変動等によりそれを定めるべき基礎となっていた事情が失われ、地代が不相当となった場合には、自動増額改定特約に拘束されず地代の増減額請求をすることができます(最判平15.6.12)。
    地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    地代等自動改定特約において地代等の改定基準を定めるに当たって基礎とされていた事情が失われることにより,同特約によって地代等の額を定めることが借地借家法11条1項の規定の趣旨に照らして不相当なものとなった場合には,同特約の適用を争う当事者は,同特約に拘束されず,同項に基づく地代等増減請求権の行使を妨げられない。
    本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。R5-11-1
  4. 誤り。契約の更新がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めるには、定期借地権契約にする必要があります。貸主から借主に対して、期間満了で終了し更新がない旨の書面をあらかじめ交付する必要があるのは「定期建物賃貸借」の場合です。定期借地権では契約方法に関して制限はありますが、定期建物賃貸借とは異なり、契約更新がない旨の書面を事前に交付する必要はありません(借地借家法22条1項)。なお、法定更新と建物買取請求権は強行規定ですので、普通借地権でこれらを排除する特約を定めることはできません。
    存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
    事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。R3⑩-11-1
    賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。R1-11-3
したがって正しい記述は[2]です。