宅建試験過去問題 平成27年試験 問11

問11

AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。
  1. AがBに対し、賃貸借契約の期間満了の6か月前までに更新しない旨の通知をしなかった場合は、AとBは、期間3年、賃料月額10万円の条件で賃貸借契約を更新したものとみなされる。
  2. 賃貸借契約を期間を定めずに合意により更新した後に、AがBに書面で解約の申入れをした場合は、申入れの日から3か月後に賃貸借契約は終了する。
  3. Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは甲建物の賃借権をBに対抗することができる。
  4. AB間の賃貸借契約がBの賃料不払を理由として解除された場合、BはAに対して、Aの同意を得てBが建物に付加した造作の買取りを請求することはできない。

正解 4

問題難易度
肢114.2%
肢27.5%
肢313.9%
肢464.4%

解説

  1. 誤り。期間の定めのある普通建物賃貸借で、更新しない旨の通知がなかった場合には、契約は従前の内容で更新(法定更新)したものとみなされ、その期間は定めがないものとなります(借地借家法第26条1項)。期間だけは従前の条件ではなく定めがないものとなるので、「期間3年」で更新とする本肢は誤りです。
    建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
  2. 誤り。期間の定めのない建物賃貸借では双方がいつでも解約の申入れができます。貸主からの解約申入れでは申入れの日から6カ月、借主からの解約申入れでは申入れの日から3カ月で終了します(借地借家法第27条1項民法616条の2第1項2号)。本肢は貸主側からの解約申入れですので、契約終了は「6か月後」となります。
    建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
    当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。

    二  建物の賃貸借 三箇月
  3. 誤り。二重に賃貸借があったときは、二重譲渡のときと同じく先に対抗要件を備えた賃借人が他方に対して賃借権を主張することができます(最判昭28.12.18)。建物賃貸借では、現に建物の(鍵などの)引渡しを受けていることが対抗要件となるので、Cは、対抗要件を備えたBに賃借権を対抗することはできません。
    第三者に対抗できる借地権を有する者は、その土地に建物を建ててこれを使用する者に対し直接その建物の収去、土地の明渡を請求することができる。
    Aが甲土地につき、本件契約とは別に、令和6年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。H29-11-1
  4. [正しい]。賃借人が、賃貸人の同意を得て建物に付加した造作等について、賃借人は契約終了時に賃貸人に対して時価での買取りを請求できます(借地借家法第33条)。ただし、賃借人の債務不履行や賃料不払など背信行為により契約が解除された場合は、この造作買取請求権は認められません(最判昭31.4.6)。
    建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
    借家法第五条は、賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため賃貸借が解除されたごとき場合には、その適用がないものと解すべきである。
したがって正しい記述は[4]です。