宅建試験過去問題 令和5年試験 問11

問11

AがBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結する場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 本件契約に、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。
  2. 本件契約が甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。
  3. 本件契約に建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地上に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
  4. 本件契約がBの居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。

正解 4

問題難易度
肢114.3%
肢216.3%
肢312.0%
肢457.4%

解説

  1. 誤り。借地契約において賃料を減額しない特約は無効です。特約はないことになるので、賃料が近隣の相場と比較して不相当となったときには、借主Bは、貸主Aに対して賃料の減額請求をすることができます(借地借家法11条1項)。
    1/25.png/image-size:577×140
    地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
    本件契約が建物所有を目的として存続期間60年とし、賃料につき3年ごとに1%ずつ増額する旨を公正証書で定めたものである場合、社会情勢の変化により賃料が不相当となったときであっても、AもBも期間満了まで賃料の増減額請求をすることができない。H29-11-3
  2. 誤り。契約更新がない借地権なので、定期借地権とする必要があります。居住用建物の所有を目的とするときには事業用定期借地権等が使えないので、一般定期借地権か建物譲渡特約付借地権を使うことになります。一般定期借地権の契約方式は書面又は電磁的記録、建物譲渡特約付借地権は無方式なので、公正証書で契約する必要はありません(借地借家法23条)。
  3. 誤り。終了事由によっては請求できません。建物買取請求権は、①借地権の存続期間が満了した場合において、②契約の更新がないときに成立する権利ですから、この2つの条件を満たさない債務不履行解除や合意解除のときには認められません(最判昭35.2.9最判昭29.6.11)。
    借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
    土地の賃貸借を合意解除した借地権者は、借地法第四条の買取請求権を有しない。
    本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。R2⑩-11-3
    建物買取請求権は、契約終了の理由を問わず、Bの債務不履行を原因とする契約終了の場合にも、BはAに対して建物の買取りを請求することができる。H14-13-2
  4. [正しい]。契約更新があるので普通借地権です。普通借地権では、存続期間が満了する場合において借地上に建物があり、借主が更新を請求したときは、貸主が正当な事由をもって遅滞なく異議を述べない限り、従前の契約と同一の条件で更新されます(借地借家法5条1項)。本肢は、更新請求に対して、貸主が遅滞なく正当な事由があると認められる異議を述べているので、契約は更新されません。
    借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。
    借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることができない。R3⑫-11-2
したがって正しい記述は[4]です。