宅建試験過去問題 令和2年12月試験 問36

問36

宅地建物取引業者の守秘義務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. 宅地建物取引業者は、依頼者本人の承諾があった場合でも、秘密を他に漏らしてはならない。
  2. 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業を営まなくなった後は、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしても、法に違反しない。
  3. 宅地建物取引業者は、裁判の証人として、その取り扱った宅地建物取引に関して証言を求められた場合、秘密に係る事項を証言することができる。
  4. 宅地建物取引業者は、調査の結果判明した法第35条第1項各号に掲げる事項であっても、売主が秘密にすることを希望した場合は、買主に対して説明しなくてもよい。

正解 3

問題難易度
肢112.3%
肢22.1%
肢384.0%
肢41.6%

解説

宅地建物取引業者とその従業者は、正当な理由がある場合を除き、業務をする上で知ることができた秘密についての守秘義務が課されています(宅建業法45条)。
宅建業法45条
宅地建物取引業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱つたことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。宅地建物取引業を営まなくなつた後であつても、また同様とする。
この「正当な理由」に該当するか否かは個別の事例ごとに判断されることになりますが、宅建業法の通達に当たる"解釈運用の考え方"では、「正当な理由」に該当するものとして以下の4つの例が挙げられています。
  1. 法律上秘密事項を告げる義務がある場合
  2. 取引の相手方に真実を告げなければならない場合
  3. 依頼者本人の承諾があった場合
  4. 他の法令に基づく事務のための資料として提供する場合
  1. 誤り。依頼者本人の承諾があった場合は、依頼者の利益を故意に損なうことがないので守秘義務の対象外とされています。
  2. 誤り。業務上知り得た秘密についての守秘義務は、宅地建物取引業者を営んでいるときだけでなく、宅地建物取引業を営まなくなった後も継続します(宅建業法45条)。よって、秘密事項を他に漏らせば法に違反します。
    宅地建物取引業者は、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密に関し、税務署の職員から質問検査権の規定に基づき質問を受けたときであっても、回答してはならない。R3⑩-40-4
    宅地建物取引業者は、いかなる理由があっても、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。R1-27-ウ
    宅地建物取引業者は、個人情報の保護に関する法律第2条第3項に規定する個人情報取扱事業者に該当しない場合、業務上取り扱った個人情報について、正当な理由なく他に漏らしても、秘密を守る義務(法第45条)に違反しない。H24-40-イ
    Aが、正当な理由なく、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他人に漏らした場合、Aは、甲県知事から業務停止処分を受けることがあるほか、罰則の適用を受けることもある。H19-36-3
    A社は、業務上知り得た秘密について、正当な理由がある場合でなければ他にこれを漏らしてはならないが、A社の従業者aについても、aが専任の宅地建物取引士であるか否かにかかわらず同様に秘密を守る義務を負う。H16-45-2
    正当な理由なしに、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らすことH13-45-ア
  3. [正しい]。裁判の証人として証言を求められたとき、税務署等の職員から質問検査権の規定に基づき質問を受けたとき等は「正当な理由」があるときに該当します。よって、秘密に係る事項を裁判で証言することができます。
  4. 誤り。宅地建物取引業者が、その相手方に対し、重要事項説明や契約書面の内容について故意に真実を告げず、または不実のことを告げる行為は禁止されています(宅建業法47条1号)。よって、売主の希望にかかわらず買主に真実を告げなければなりません。この場合、法律上の規定により秘密事項を告げる義務があるため、「正当な理由」があるとして守秘義務違反に問われることはありません。
    宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の契約の締結について勧誘をするに際し、又はその契約の申込みの撤回若しくは解除若しくは宅地建物取引業に関する取引により生じた債権の行使を妨げるため、次のいずれかに該当する事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
    宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買の契約の締結の勧誘をするに際し、宅地建物取引業者の相手方等に対し、宅地又は建物の引渡しの時期について故意に不実のことを告げた場合であっても、契約が成立したときに宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面に当該事項を正確に記載すればよい。R6-42-2
    Aが、賃貸アパートの媒介に当たり、入居申込者が無収入であることを知っており、入居申込書の収入欄に「年収700万円」とあるのは虚偽の記載であることを認識したまま、その事実を告げずに貸主に提出した行為は法に違反する。H28-34-1
    A社は、その相手方等に対して契約に係る重要な事項について故意に事実を告げない行為は禁止されているが、法人たるA社の代表者が当該禁止行為を行った場合、当該代表者については懲役刑が科されることがあり、またA社に対しても罰金刑が科されることがある。H16-44-4
したがって正しい記述は[3]です。