宅建試験過去問題 令和2年10月試験 問4
問4
建物の賃貸借契約が期間満了により終了した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、賃貸借契約は、令和6年7月1日付けで締結され、原状回復義務について特段の合意はないものとする。- 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、通常の使用及び収益によって生じた損耗も含めてその損傷を原状に復する義務を負う。
- 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃借人の帰責事由の有無にかかわらず、その損傷を原状に復する義務を負う。
- 賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。
- 賃借人は、未払賃料債務がある場合、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てるよう請求することができる。
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正解 3
問題難易度
肢16.8%
肢27.2%
肢375.3%
肢410.7%
肢27.2%
肢375.3%
肢410.7%
分野
科目:1 - 権利関係細目:9 - 賃貸借契約
解説
- 誤り。賃借人は賃貸借契約の終了時に、賃借物を原状回復して返還する義務を負いますが、通常の使用収益に伴って生じた賃借物の損耗や経年変化については原状回復義務の対象外です(民法621条)。これら通常損耗は賃料に織り込み済であると解されているからです。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
- 誤り。賃借物を受け取った以降に生じた損傷のうち、賃借人の帰責事由がない損傷についても原状回復義務の対象外とされています(民法621条)。賃貸住宅を想定すると、帰責性がない例としては自然災害や他の住居からの水漏れなど、逆に帰責性がある例としては賃借人の故意や不注意若しくは使用や管理における不備が認められる場合となります。
- [正しい]。賃貸物の返還と敷金の返還は同時履行ではなく、賃貸物の返還が先履行であるというのが以前からの判例法理でした(最判昭49.9.2)。2020年の改正民法ではこれを明文化し、敷金の返還は、賃貸借契約が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときにすると定めています(民法622条の2第1項)。よって、賃貸人は賃貸物の返還を受けるまで敷金の返還を拒むことができます。
家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。
賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。賃貸借契約が終了した場合、建物明渡債務と敷金返還債務とは常に同時履行の関係にあり、Aは、敷金の支払と引換えにのみ建物を明け渡すと主張できる。(H13-9-3) - 誤り。賃貸人は、敷金を未払いの賃料債務の弁済に充当することができますが、これを賃借人の方から請求することはできません(民法622条の2第2項)。
賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
賃貸借契約期間中でも、Bの返済能力に客観的な不安が生じた場合は、Aは、賃料支払債務と敷金返還請求権とを対当額にて相殺することができる。(H13-9-1)
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