宅建試験過去問題 平成30年試験 問3

問3

AとBとの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」という。)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という。)。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. 本件約定は、停止条件付贈与契約である。
  2. 本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、AはBに対して損害賠償責任を負う。
  3. Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。
  4. 本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。

正解 3

問題難易度
肢14.9%
肢210.7%
肢371.4%
肢413.0%

解説

  1. 正しい。本件約定は、試験に合格した場合に効力が生じる契約であるため、停止条件付贈与契約になります(民法127条1項)。
    停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
    Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。H30-3-3
    あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、Bが報酬の一部前払を要求してきても、Aには報酬を支払う義務はない。H18-3-1
  2. 正しい。条件付き契約の各当事者は、条件の成否が未定である間に相手方の利益を害することはできません(民法128条)。本肢の場合、Aは、停止条件付贈与契約の対象である甲建物を、本件約定の後、条件の成否が未定である間に滅失させたため、Bに対して不法行為による損害賠償責任を負うことになります(期待権の侵害)。
    また、Bが試験に合格し契約の効力が生じた際は、Aの有責により履行不能となっているので債務不履行による損害賠償責任を負います。
    条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
    停止条件の成否が未定である間に、Bが乙不動産を第三者に売却し移転登記を行い、Aに対する売主としての債務を履行不能とした場合でも、停止条件が成就する前の時点の行為であれば、BはAに対し損害賠償責任を負わない。H23-2-3
    Aが、A所有の不動産の売買代金の受領を拒否して、故意に停止条件の成就を妨げた場合、Bは、その停止条件が成就したものとみなすことができる。H15-2-4
  3. [誤り]。停止条件付き契約は、その停止条件が成就した時から効力を生じます。
    よって、Bが建物所有権を取得するのは、約定時点ではなく、試験に合格した時点です(民法127条1項)。
    本件約定は、停止条件付贈与契約である。H30-3-1
    あっせん期間が長期間に及んだことを理由として、Bが報酬の一部前払を要求してきても、Aには報酬を支払う義務はない。H18-3-1
  4. 正しい。意思能力がない状態でした法律行為は無効となります(民法3条の2)。よって、Bは本件試験に合格しても、所有権を取得することはできません。
    法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
    営業を許された未成年者が、その営業に関する意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合は、その法律行為は無効である。R6-1-1
    意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。R3⑩-5-4
    AB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は無効となる。H19-1-4
    買主Cが意思無能力者であった場合、Cは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。H17-1-2
したがって誤っている記述は[3]です。