宅建試験過去問題 平成24年試験 問7
問7
物上代位に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。なお,物上代位を行う担保権者は,物上代位の対象とする目的物について,その払渡し又は引渡しの前に差し押さえるものとする。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について,Bの一般債権者が差押えをした場合には,Aは当該賃料債権に物上代位することができない。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について,Aが当該建物に抵当権を実行していても,当該抵当権が消滅するまでは,Aは当該賃料債権に物上代位することができる。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合,Aは,当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。
- Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について,CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合,Aは,CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。
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正解 1
問題難易度
肢148.7%
肢219.9%
肢312.4%
肢419.0%
肢219.9%
肢312.4%
肢419.0%
分野
科目:1 - 権利関係細目:7 - 債権総則(保証・連帯債務など)
解説
- [誤り]。同一の債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位に基づく差押えが競合した場合、その優劣は、一般債権者の差押え命令の第三者への送達と抵当権設定登記の先後によって決まります(最判平10.3.26)。本肢は抵当権設定登記が先ですから、Aは賃料債権に物上代位することができます。
債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決すべきである。
Bの一般債権者であるDが、BのCに対する賃料債権を差し押さえ、その命令がCに送達された後は、Cが弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。(H15-5-2) - 正しい。抵当不動産について抵当権を実行している場合であっても、当該抵当権が消滅するまでは、物上代位の目的となる金銭等(賃料債権など)について抵当権を行使することが可能です(最判平1.10.27)。
目的不動産に対して抵当権が実行されている場合でも、右実行の結果抵当権が消滅するまでは、賃料債権ないしこれに代わる供託金還付請求権に対しても抵当権を行使することができるものというべきである。
- 正しい。抵当権は、抵当不動産の売却・賃貸・滅失・損傷により債務者が受ける金銭等にも行使することができます(民法304条1項)。建物の焼失により受け取る火災保険金は上記の金銭等に該当するため、Aは損害保険金請求権に物上代位することが可能です。
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。(H22-5-2)抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。(H17-5-3)Bが、BのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し、対抗要件を備えた後は、Cが当該第三者に弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。(H15-5-1)Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは、Aは、その代金債権に対して、払渡し前に差押えをしないで、先取特権を行使することができる。(H12-3-3) - 正しい。抵当不動産の賃借人は、物上代位の対象となる金銭等を受領する「債務者」に含まれないと解されています。このため、賃借人が所有者と同一視できる状況を除き、抵当権者は転貸賃料債権には物上代位できません(最判平12.4.14)。よって、Aは転貸人(賃借人)Cの転貸賃料債権に物上代位することは当然にはできません。
抵当権者は、抵当不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合を除き、右賃借人が取得する転貸賃料債権について物上代位権を行使することができない。
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