所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中23問目)

No.23

A、B及びCが、持分を各3分の1として甲土地を共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成18年試験 問4
  1. 甲土地全体がDによって不法に占有されている場合、Aは単独でDに対して、甲土地の明渡しを請求できる。
  2. 甲土地全体がEによって不法に占有されている場合、Aは単独でEに対して、Eの不法占有によってA、B及びCに生じた損害全額の賠償を請求できる。
  3. 共有物たる甲土地の分割について共有者間に協議が調わず、裁判所に分割請求がなされた場合、裁判所は、特段の事情があれば、甲土地全体をAの所有とし、AからB及びCに対し持分の価格を賠償させる方法により分割することができる。
  4. Aが死亡し、相続人の不存在が確定した場合、Aの持分は、民法第958条の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなされない場合はB及びCに帰属する。

正解 2

問題難易度
肢19.7%
肢268.7%
肢39.1%
肢412.5%

解説

  1. 正しい。共有者は保存行為であれば単独で行うことができます(民法252条)。不法占拠者に対する妨害排除請求は保存行為とされているので、各共有者が単独で行うことが可能です(大判大10.6.13)。
    共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
    第三者が共有地を不法に占有している場合,各共有者は,単独で,当該第三者に対して,当該共有地の明渡しを請求することができる。
    A、B及びCが甲土地について、Eと賃貸借契約を締結している場合、AとBが合意すれば、Cの合意はなくとも、賃貸借契約を解除することができる。H19-4-2
  2. [誤り]。不法占拠者に対する損害賠償請求は、各自の持分についてのみ行うことが可能です(最判昭41.3.3)。よって、A単独ではEに対して自分の持分相当だけしか損害賠償請求できません。
    共有者は、共有物に対する不法行為によりこうむつた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
    建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。H25-4-3
  3. 正しい。共有物を一人の単独所有とし、他の共有者に対してそれぞれの持分を現金で賠償させる分割方法(全面的価格賠償)も認められています(民法258条2項)。
    裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
    一 共有物の現物を分割する方法
    二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
    裁判による共有物の分割では、Aに建物を取得させ、AからB・Cに対して適正価格で賠償させる方法によることは許されない。H13-1-4
  4. 正しい。共有者の一人が死亡し、相続人がいない場合で特別縁故者に対する財産分与もなされないとき、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。
    共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
    共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は国庫に帰属する。R2⑫-10-4
    GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。H29-3-4
    Aがその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。H19-4-4
    Aが、その共有持分を放棄した場合、この建物は、BとCの共有となり、共有持分は各2分の1となる。H15-4-3
したがって誤っている記述は[2]です。