所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中11問目)

No.11

次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
共有者の一部の者から共有者の協議に基づかないで共有物を占有使用することを承認された第三者は、その者の占有使用を承認しなかった共有者に対して共有物を排他的に占有する権原を主張することはできないが、現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権原を有するので、第三者の占有使用を承認しなかった共有者は右第三者に対して当然には共有物の明渡しを請求することはできないと解するのが相当である。
平成29年試験 問3
  1. 共有者は、他の共有者との協議に基づかないで当然に共有物を排他的に占有する権原を有するものではない。
  2. AとBが共有する建物につき、AB間で協議することなくAがCと使用貸借契約を締結した場合、Bは当然にはCに対して当該建物の明渡しを請求することはできない。
  3. DとEが共有する建物につき、DE間で協議することなくDがFと使用貸借契約を締結した場合、Fは、使用貸借契約を承認しなかったEに対して当該建物全体を排他的に占有する権原を主張することができる。
  4. GとHが共有する建物につき、Gがその持分を放棄した場合は、その持分はHに帰属する。

正解 3

問題難易度
肢19.6%
肢27.6%
肢374.1%
肢48.7%

解説

判決文の要旨は次のとおりです。
  • 協議に基づかず、ある共有者から共有物の占有を承認された第三者は、共有物の排他的占有を主張することができないが、承認をした共有者が有する持分の範囲で占有することができる
  • 他の共有者は、共有物の占有する共有者に対して当然に明渡しを求めることができないのと同様に、占有を承認された第三者に対しても当然に明渡しを求めることはできない
  1. 正しい。判例文に「共有者の協議に基づかないで…占有する権限を主張することはできない」とあります。共有者は自己の持分に応じて共有物を使用する権原を有しますが、他の共有者との協議を経ずに当然に共有物を単独で占有する権原を有するものではありません。
  2. 正しい。判決文に「現にする占有がこれを…明渡しを請求することはできない」とあります。Cは共有者Aの承認を受けて建物の使用をしているため、他の共有者Bは、Cに対して当然に建物の明渡しを請求することはできません。
  3. [誤り]。判決文に「現にする占有がこれを承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用する権限を有する」とあります。共有者Dから占有の承認された第三者Fは、占有を承認した共有者Aの持分に応じた使用は可能ですが、建物全体を排他的に占有する権限までは有しません。
  4. 正しい。共有者の1人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属します(民法255条)。したがって、共有者がGHの2人であるとき、Gが放棄した持分はHに帰属します。
    共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
    共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は国庫に帰属する。R2⑫-10-4
    Aがその持分を放棄した場合には、その持分は所有者のない不動産として、国庫に帰属する。H19-4-4
    Aが死亡し、相続人の不存在が確定した場合、Aの持分は、民法第958条の3の特別縁故者に対する財産分与の対象となるが、当該財産分与がなされない場合はB及びCに帰属する。H18-4-4
    Aが、その共有持分を放棄した場合、この建物は、BとCの共有となり、共有持分は各2分の1となる。H15-4-3
したがって誤っている記述は[3]です。

参考URL: 最判昭63.5.20
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62371