平成19

さん
(No.1)
Aと売買契約を締結したCが、登記を信頼して売買契約を行った場合、甲土地がAの土地ではなく第三者Dの土地であったとしても、Dの過失の有無にかかわらず、Cは所有権を取得することができる。

答えはバツなのですが、理解できません。
他人物売買は悪意でも有効と認識しているので正確だと
思っています。
2022.09.09 12:42
こっけいさん
(No.2)
あ様

説明が下手なので長く大雑把にはなりますが…
まず他人物売買の契約自体は有効に成立しています。ただし、「当該契約により即座に所有権が取得できるわけではない」ことがまず言えます。対抗問題に発展したりすれば、契約がどうであれ法律で認められた対抗力を備えた方が所有権を主張できます。
ご質問の問題文では、言い換えれば「どんな手段を用いても必ずCに所有権があることが公的に認められるか」が問われています。ここでまず注意するのは、「登記はAだけど所有者はDである」ことと、「登記されている事項は公信力がない」ことです。
登記は通常、登記義務者と登記管理者が共同で登記を行いますので一見公的に認められて登記は絶対真実のことしか記載されないように見えます。しかし例えば、登記義務者の委任状を偽造するなど悪意を持って登記を行った場合があったらそれは当然事実でないですし実際可能です(当然犯罪です)。
さらに登記忘れや事実の隠蔽等々、登記に関わった当事者が善意悪意に関わらず「必ずしも登記が真実でない」ことは常に明らかです。
なのでこの立場から見れば、「登記に公信力がない(=登記を信じて取引しても、登記があることを理由とする権利主張は必ずしも認められるわけではない)」と言えるでしょう。(登記があることを理由とする権利主張は、対抗問題に発展した時などであれば「双方の登記の先後」が対抗要件になったりするので登記を根拠とできること自体はご納得いただけるかと。)

さて問題に振り返りますが、「登記名義人はA、真実の所有者はD、買主はC」です。そして問題文中に「Dの過失の有無に関わらず」とあります。
上で登記に公信力が無いことはざっくりと書きましたが、なら法律は誰に所有権を認めるか(=誰の権利を保護するか)という話になります。問題文でDの土地であることが示されているので、この問題文中においてはAに権利はないのでAは保護されません。残るのはCとDですが、ここでDの過失について争点になります。
理由はどうあれAの登記が事実存在しているので、問題文中のDの過失とは「Aの登記がされていることについてDは悪意又は重過失である」ことを言います。
もしDがAの登記を知っていて放置したか、Aの登記がされたことにDにも責任がある(例えばAD間売買契約の解除をして登記を放置していたとか、AがDの委任状の偽造書を作るのに必要な印鑑証明書をDがAに手渡したとか)場合であれば、Aの登記についてDに落ち度があるので、登記を信頼していた落ち度のないCを保護します。
逆にDに過失が何もなくかつ気付いていなかったりした(例えばDの関与が全くない状態でAが勝手に登記した)場合、本来の持ち主であるDが優先して保護されます。
問題文では「Dの過失の有無にかかわらず」とあるので、Dが善意無過失なら保護される以上問題としてはバツです。

次に他人物売買です。これは悪意だろうと当事者間で有効です。
ここで問題文の紛争が起こったとします。
Cが保護されれば当然Cに所有権があるので、ここではDが保護された場合を考えます。Dが保護されればAC間売買契約は、土地の譲渡をAが行うことができないので、Cに対してAは債務不履行責任を負います。この時点で売買契約は無効になる訳ではなく成立するので、他人物売買は有効です。

なので、あ様の疑問点に対する解答は
・問題文は「Dの所有権が認められる場合がある」のでバツ
・「他人物売買の成立」と「公的に認められる権利の取得等の移動」は、必ずしも同時にあるわけではない。
・なので問題は成立します。

途中実際の解釈と正確には違う部分もあるかもしれませんが、概ねこの通りとなります。
長々と申し訳ございません。
2022.09.09 14:03
ヤスさん
(No.3)
こっけいさんが詳細に説明してくれており、私はあさんが引っ掛かっている「他人物売買は有効」をもう少し紐解きます。

他人物を目的とする契約は、債権契約として有効に成立します。
この問題で言えば、売主Cさんは、本当の権利者Dさんより土地を手に入れて、買主Aさんに引き渡す義務を負います。
また買主Aさんは、それに対してCさんに土地の代金を払う義務を負います。この二人の関係は債権債務の関係でしかありません。
売主から見たら「土地手に入れてくるから金払えや」と言う関係、買主から見たら「代金払うから土地を手に入れてこいや」と言う関係でしかありません。
で、それができなかったら、債務不履行責任を負う関係です。当事者間でお互いを縛る関係でしかありません。
それを超えて、本当の所有者、ひいては他のみんなに広く「いや、俺が買ったから俺が所有者だから」と主張できるものではないです。

他人物を売ったCさんが責められる事はあっても、本当の所有者Dさんが責められる筋合いはないものとなります。
通常はそうです。買主Aさんには「文句があるなら売主Cに言えや」としかなりません。

しかし、もし所有者が一見するとCさんに見えるこの関係に、本当の所有者Dさんが絡んでた場合は、ちょっと違います。登記が自分にないことをわかっており、それを放置していた場合ですね。

この問題の根拠となった判例では、裁判所は「虚偽表示」の規定を類推適用しています。
登記が自分に無い事を知ってて放置していたのは、まるでCさんとDさんでグルになって周りから見たら「Cさんが所有者じゃん」と思わせている虚偽表示の関係と似ているよねと、裁判所は判断しました。

後の説明はこっけいさんの説明に譲りますが、考え方の筋道はこのようになります。
2022.09.10 03:18

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