宅建試験過去問題 平成30年試験 問25

問25

不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、不動産鑑定評価基準によれば、正しいものはどれか。
  1. 不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、これを最有効使用の原則という。
  2. 収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効な手法であるが、事業の用に供さない自用の不動産の鑑定評価には適用すべきではない。
  3. 鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別され、実際の鑑定評価に際しては、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した手法をいずれか1つ選択して、適用すべきである。
  4. 限定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格のことをいい、民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提として求められる価格が例としてあげられる。

正解 1

問題難易度
肢165.8%
肢25.6%
肢37.9%
肢420.7%

解説

  1. [正しい]。最有効使用の原則とは、不動産鑑定評価をする上での価格原則の一つで、その不動産を実現可能な範囲内で最も有効的に活用したことを前提として把握される価格を標準として土地の価格を決定するというものです(不動産鑑定評価基準4章)。
  2. 誤り。収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法で、直接還元法とDCF法の2つがあります。収益還元法は、賃貸物件の価格を求める際に特に有効ですが、自用の不動産の場合であっても、賃貸を想定することにより適用できるとしています(不動産鑑定評価基準7章1節)。
  3. 誤り。不動産の鑑定評価の手法には、原価法、取引事例比較法、収益還元法の3つがあります。不動産鑑定評価基準では、対象不動産の市場の特性等を適切に反映した複数の手法を併用して適用すべきであるとしています(不動産鑑定評価基準8章7節)。
  4. 誤り。本肢は「特定価格」についての説明なので誤りです。
    限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます(不動産鑑定評価基準5章3節)。
    限定価格を適用する場面については、①借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合、②隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合、③経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合が例示されています。いずれも併合・分割がキーワードになっています。
したがって正しい記述は[1]です。