宅建試験過去問題 平成27年試験 問2
問2
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。- 善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間売買契約の無効をCに主張することができない。
- 善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
- Bの債権者である善意のCが、甲土地を差し押さえた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。
- 甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。
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正解 2
問題難易度
肢116.6%
肢253.0%
肢316.8%
肢413.6%
肢253.0%
肢316.8%
肢413.6%
分野
科目:A - 権利関係細目:2 - 意思表示
解説
- 正しい。通謀虚偽表示に関して問われています。相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効ですが、善意の第三者には対抗することができません(民法94条)。第三者は善意であればよく、無過失や登記は要求されていません。
したがって、善意のCに対して、Aは売買契約の無効を主張することはできません。相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。 - [誤り]。通謀虚偽表示における第三者とは、虚偽表示の当事者又はその一般承継人以外の者であって、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至った者をいいます(最判昭42.6.29)。Cが利害関係を有するのは建物の賃貸借契約、通謀虚偽表示が行われたのは土地の売買契約ですから、Cは土地の売買契約について法律上の利害関係を有するとは認められず、第三者に該当しません(最判昭57.6.8)。したがって、AはCに対して売買契約の無効を主張することができます。
民法第九四条第二項にいわゆる第三者とは、虚偽の意思表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいう。
土地の仮装譲受人からその建築にかかる右土地上の建物を賃借した者は、民法九四条二項所定の第三者にはあたらない。
- 正しい。判例では、不動産の仮装譲受人から抵当権の設定を受けたもの(大判大4.12.17)や仮装債権の譲受人(大判昭6.6.9)も「第三者」に該当するとしています。つまり、虚偽表示の目的物を差し押さえた債権者Cも第三者に該当します(仮想譲受人の差押えを行っていない、単なる債権者は利害関係があるとは言えず「第三者」にすら該当しません)。
したがって、Aは善意の第三者であるCに対して、売買契約の無効を主張することはできません。 - 正しい。本件では、悪意の第三者から善意の転得者へ譲渡されていますが、転得者も第三者に当たります。一旦、善意の第三者が現れた場合には、その者が完全な権利を取得することから、その後の転得者が悪意であっても転得者に対して無効を主張することはできません(最判昭45.7.24)。
Dは善意の第三者に当たりますから、Aは、Dに売買契約の無効を主張することはできません。民法九四条二項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。
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