宅建試験過去問題 平成23年試験 問4

問4

根抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. 根抵当権者は、総額が極度額の範囲内であっても、被担保債権の範囲に属する利息の請求権については、その満期となった最後の2年分についてのみ、その根抵当権を行使することができる。
  2. 元本の確定前に根抵当権者から被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することはできない。
  3. 根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは、一定期間が経過した後であっても、担保すべき元本の確定を請求することはできない。
  4. 根抵当権設定者は、元本の確定後であっても、その根抵当権の極度額を、減額することを請求することはできない。

正解 2

問題難易度
肢114.1%
肢261.2%
肢39.3%
肢415.4%

解説

  1. 誤り。極度額の範囲ならば、最後の2年分に限らず元本・利息等の全部につき、その根抵当権を行使できます(民法398条の3第1項)。これに対し、普通抵当権では最後の2年分を超える利息について優先して弁済を受けることはできません。
    根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。
    B信用金庫は、確定した元本が極度額以下であれば、その元本に係る最後の2年分の約定金利については、極度額を超えても、根抵当権を行使できる。H19-8-3
    登記された極度額が1億円の場合、根抵当権者は、元本1億円とそれに対する最後の2年分の利息及び損害金の合計額につき、優先弁済を主張できる。H12-5-3
  2. [正しい]。元本確定前の根抵当権は、個々の被担保債権と一緒に移動することはありません(随伴性がない)。よって、根抵当権者から債権を取得した者が、根抵当権を行使することはできません。
  3. 誤り。根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合であっても、根抵当権設定時から3年経過後は、いつでも担保すべき元本の確定を請求することができ、請求から2週間後に元本確定となります(民法398条の19第1項)。他方、根抵当権者はいつでも元本確定を請求することができます。
    根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する。
  4. 誤り。根抵当権設定者は、元本の確定後に極度額の減額を請求することができます。ただし、減額できるのは「現に存在する債務額+2年分の利息等」の額までに制限されます(民法398条の21)。
    元本の確定後に被担保債権が増えることはないため、大きい極度額を設定していた場合は極度額に満たない部分の枠が無駄になってしまいます。極度額を減らすことで担保の価値を別の債務に利用できるようになります。例えば、極度額が2,000万円で、確定元本が500万円だった場合、極度額を500万円+利息2年分に減額できれば、残りの1,500万円分に新たな(根)抵当権を設定できるみたいなイメージです。
    元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる。
したがって正しい記述は[2]です。