宅建試験過去問題 平成15年試験 問1(改題)
問1
意思無能力者又は制限能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。- 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。
- 未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合、親権者の同意の有無にかかわらず、親権者が当該意思表示を取り消せば、意思表示の時点に遡って無効となる。
- 成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
- 被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。
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正解 3
問題難易度
肢110.9%
肢26.2%
肢368.1%
肢414.8%
肢26.2%
肢368.1%
肢414.8%
分野
科目:1 - 権利関係細目:1 - 制限行為能力者
解説
- 誤り。意思能力を欠いている者がした意思表示はそもそも行為として無効です(民法3条2項)。よって、意思表示を取り消すことで無効になるわけではありません。幼児や、泥酔者、重度の認知症の人などが意思無能力者に該当します。
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
- 誤り。未成年者が法律行為をするには、法定代理人である親権者の同意を得なければなりません(民法5条1項)。同意を得ずに行った行為については法定代理人に取消権が認められていますが、同意を得た行為は取り消すことはできません(民法5条2項)。
未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
- [正しい]。成年被後見人が行った行為のうち、成年後見人の代理によらず行った行為は、後から成年後見人が取り消すことができます(民法9条)。成年被後見人の場合、同意を得てもそのとおりに意思表示をする可能性が低いと考えられるためです。本肢のように、同意を得た意思表示であっても成年後見人は意思表示を取り消すことが可能です。
成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
- 誤り。被保佐人が、重要な財産である不動産を取得・処分する場合には、保佐人の同意が必要とされています(民法13条1項3号)。被保佐人が、同意や許可を受けずに土地を売却した場合には保佐人は後から取り消すことができますが、本肢は保佐人の同意の上で行った意思表示ですので取り消せません(民法13条4項)。
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
…
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。(H28-2-2)被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。(H22-1-3)被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。(H20-1-4)買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。(H17-1-1)
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