代理(全18問中17問目)

No.17

Aが、B所有の建物の売却(それに伴う保存行為を含む。)についてBから代理権を授与されている場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成13年試験 問8
  1. Aが、Bの名を示さずCと売買契約を締結した場合には、Cが、売主はBであることを知っていても、売買契約はAC間で成立する。
  2. Aが、買主Dから虚偽の事実を告げられて売買契約をした場合でも、Bがその事情を知りつつAに対してDとの契約を指図したものであるときには、BからDに対する詐欺による取消はできない。
  3. Aが、買主を探索中、台風によって破損した建物の一部を、Bに無断で第三者に修繕させた場合、Bには、修繕代金を負担する義務はない。
  4. Aは、急病のためやむを得ない事情があっても、Bの承諾がなければ、さらにEを代理人として選任しBの代理をさせることはできない。

正解 2

問題難易度
肢113.8%
肢266.9%
肢311.2%
肢48.1%

解説

  1. 誤り。代理人が依頼主のためであることを示さなかった場合でも、代理人の相手方がそのことを知っていた場合は、その売買契約の効果は本人に帰属します(民法100条)。よって、Cが、売主はBであることを知っているときには、売買契約はBC間で成立します。
    代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
    Bが自らを「売主Aの代理人B」ではなく、「売主B」と表示して、買主Cとの間で売買契約を締結した場合には、Bは売主Aの代理人として契約しているとCが知っていても、売買契約はBC間に成立する。H21-2-1
    CがBの代理人であることをAに告げていなくても、Aがその旨を知っていれば、当該売買契約によりAは甲地を取得することができる。H17-3-ア
  2. [正しい]。意思表示における瑕疵の有無は代理人を基準に決定されます。しかし、本人が自ら知っていた事情について、代理人が知らなかったことを主張することはできません。本肢では依頼主Bが詐欺の事実を知っていたのですから、代理人Aの意思表示が詐欺によるものであることを主張することは許されず、Dとの売買契約の取消はできません(民法101条3項)。
    特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
  3. 誤り。本問では建物売却とそれに伴う保存行為が代理権の内容となっています。建物の一部を修繕する行為は保存行為であり、Aが行った行為は代理権の範囲内ですから、その法律効果はBに帰属します(民法99条1項)。よって、Bは修繕代金を負担しなければなりません。
    代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
  4. 誤り。委任による代理人(任意代理人)は、①本人の許諾を得たとき、または②やむを得ない事由があるときに限り復代理人を選任できます(民法104条)。本肢のケースは「やむを得ない事情」があるので、依頼主Bの承諾がなくても復代理人を選任することが可能です。
    委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
    委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。H29-1-2
    Bは、自らが選任及び監督するのであれば、Aの意向にかかわらず、いつでもEを復代理人として選任して売買契約を締結させることができる。H21-2-3
    Bは、やむを得ない事由があるときは、Aの許諾を得なくとも、復代理人を選任することができる。H19-2-1
    Bは、自己の責任により、自由に復代理人を選任することができる。H12-1-2
したがって正しい記述は[2]です。