売買契約(全31問中27問目)

No.27

同時履行の関係に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成15年試験 問9
  1. 動産売買契約における目的物引渡債務と代金支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
  2. 目的物の引渡しを要する請負契約における目的物引渡債務と報酬支払債務とは、同時履行の関係に立つ。
  3. 貸金債務の弁済と当該債務の担保のために経由された抵当権設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立つ。
  4. 売買契約が詐欺を理由として有効に取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。

正解 3

問題難易度
肢17.7%
肢215.4%
肢361.5%
肢415.4%

解説

  1. 正しい。売買契約は双務契約ですので、両者の債務は同時履行の関係に立ちます(民法533条)。相手方が債務の履行を提供するまでは、自身の履行を拒むことが可能です。
    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
    Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。R6-4-3
    請負人の報酬債権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該残債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。R6-5-3
    Bは、本件代金債務の履行期が過ぎた場合であっても、特段の事情がない限り、甲建物の引渡しに係る履行の提供を受けていないことを理由として、Aに対して代金の支払を拒むことができる。R1-7-4
    Bが報酬を得て売買の媒介を行っているので、CはAから当該自動車の引渡しを受ける前に、100万円をAに支払わなければならない。H29-5-1
    請負契約の目的物に契約不適合がある場合、注文者は、請負人から履行の追完に代わる損害の賠償を受けていなくとも、特別の事情がない限り、報酬全額を支払わなければならない。H29-7-3
    Bは、自らの債務不履行で解除されたので、Bの原状回復義務を先に履行しなければならず、Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。H21-8-3
    Aは、一旦履行の提供をしているので、Bに対して代金の支払を求める訴えを提起した場合、引換給付判決ではなく、無条件の給付判決がなされる。H18-8-3
  2. 正しい。請負契約も双務契約ですから、目的物の引渡し債務と報酬支払い債務は同時履行の関係に立ちます(民法533条民法633条)。
    報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第六百二十四条第一項の規定を準用する。
  3. [誤り]。貸金債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続とは、同時履行の関係に立ちません。先に債務の弁済があり、それによって抹消登記の手続きとなります(最判昭57.1.19大判明37.10.14)。
    抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない。
    債務の履行とその債務を担保するために設定された抵当権設定登記の抹消登記手続とは,同時履行の関係にはない。
  4. 正しい。売買契約が解除された場合の原状回復義務は同時履行の関係にあります(民法546条、民法533条)。判例では、契約が詐欺として取り消された場合でも同時履行の関係に立つとしています(最判昭47.9.7)。
    売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
したがって誤っている記述は[3]です。
1/08.png/image-size:497×204