売買契約(全31問中26問目)

No.26

宅地建物取引業者ではないAB間の売買契約における売主Aの責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成16年試験 問10
  1. Bは住宅建設用に土地を購入したが、都市計画法上の制約により当該土地に住宅を建築することができない場合、そのことを知っていたBは、Aに対し土地売主の担保責任を追及することができることがある。
  2. Aは、C所有の土地を自ら取得するとしてBに売却したが、Aの責に帰すべき事由によってCから所有権を取得できず、Bに所有権を移転できない場合、他人物売買であることを知っていたBはAに対して損害賠償を請求できない。
  3. Bが購入した土地の一部を第三者Dが所有していた場合、Bがそのことを知っていたとしても、BはAに対して追完請求をすることができる。
  4. Bが敷地賃借権付建物をAから購入したところ、敷地の欠陥により擁壁に亀裂が生じて建物に危険が生じた場合、Bは敷地の欠陥を知らなかったとしても、Aに対し建物売主の担保責任を追及することはできない。

正解 2

問題難易度
肢114.4%
肢248.6%
肢36.1%
肢430.9%

解説

  1. 正しい。売買目的物に契約内容に適合しない事実がある場合、売主の担保責任を追及することが可能です。この契約不適合には、物理的なものだけでなく法律上の不適合も含まれます(最判昭41.4.14)。
    売主の契約不適合担保責任を追及できるかどうかは、あくまで契約内容に合うものが引き渡されたかどうかで決まり、買主の主観的要件(善意・無過失)は要求されません。本肢では買主悪意ですが、契約内容で合意されていなければ担保責任の追及ができることがあります。例えば、市街化調整区域の土地について売主が「住宅を建築可能」として売ったとして、住宅建築を目的としてその土地を買った買主は、建築できないことをうっすら知っていたとしても、それをもって担保責任を追及できないということはありません。
    買主が原判示規模の居宅(原判決理由参照)の敷地として使用する目的を表示して買い受けた土地の約八割の部分が都市計画街路の境域内に存するため、たとえ買主が右居宅を建築しても、早晩、都市計画事業の実施により、その全部または一部を撤去しなければならない場合において、右計画街路の公示が、売買契約成立の一〇数年以前に、告示の形式でなされたものであるため、買主において買受土地中の前記部分が右計画街路の境域内に存することを知らなかつたことについて過失があるといえないときは、売買の目的物に隠れた瑕疵があると解するのが相当である。
  2. [誤り]。改正後の民法では、担保責任の追及に買主の善意無過失は要求されなくなりました。よって、Bが他人物売買であることにつき悪意であっても、債務不履行の原則に基づき、売主に帰責事由がある場合には損害賠償請求が可能です。
    本肢は、Aに帰責事由があるのに損害賠償請求できないとしているので誤りです。
  3. 正しい。他人物の全部または一部を売買の目的とした場合、売主には他人から権利を取得して買主に移転する義務が生じます(民法561条)。買主が他人物売買であることにつき悪意でも、売主の担保責任に基づき、履行の追完を請求することが可能です。
    他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
    他人が所有している土地を目的物にした売買契約は無効であるが、当該他人がその売買契約を追認した場合にはその売買契約は有効となる。R6-1-4
    Bが購入した目的物が第三者Cの所有物であり、Aが売買契約締結時点でそのことを知らなかった場合には、Aは損害を賠償せずに売買契約を解除することができる。R3⑫-4-3
    売買契約締結時には当該自動車がAの所有物ではなく、Aの父親の所有物であったとしても、AC間の売買契約は有効に成立する。H29-5-4
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aの責めに帰すべき事由により、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができる。H28-6-1
    Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。H28-6-2
    甲土地がAの所有地ではなく、他人の所有地であった場合には、AB間の売買契約は無効である。H21-10-3
    買主が、売主以外の第三者の所有物であることを知りつつ売買契約を締結し、売主が売却した当該目的物の所有権を取得して買主に移転することができない場合には、買主は売買契約の解除はできるが、損害賠償請求はできない。H17-9-1
    Aが、B・Cに無断で、この建物を自己の所有としてDに売却した場合は、その売買契約は有効であるが、B・Cの持分については、他人の権利の売買となる。H13-1-1
  4. 正しい。本肢の契約において売買目的物は「建物」です。敷地の欠陥は売買目的物の欠陥ではありませんので、BはAに対して担保責任を追及することはできません(最判平3.4.2)。
    建物とその敷地の賃借権とが売買の目的とされた場合において、賃貸人が修繕義務を負担すべき敷地の欠陥は、売買の目的物の隠れた瑕疵ではない。
したがって誤っている記述は[2]です。