借地借家法(土地)(全26問中22問目)

No.22

借地人Aが、令和4年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
平成17年試験 問13
  1. 甲地上のA所有の建物が登記されている場合には、AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Bの承諾の有無にかかわらず、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。
  2. Aが借地権をCに対して譲渡するに当たり、Bに不利になるおそれがないにもかかわらず、Bが借地権の譲渡を承諾しない場合には、AはBの承諾に代わる許可を与えるように裁判所に申し立てることができる。
  3. Aが借地上の建物をDに賃貸している場合には、AはあらかじめDの同意を得ておかなければ、借地権を譲渡することはできない。
  4. AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を20年とする借地契約である場合には、AはBの承諾の有無にかかわらず、借地権をCに対して譲渡することができ、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。

正解 2

問題難易度
肢111.4%
肢271.1%
肢310.5%
肢47.0%

解説

  1. 誤り。本肢は「Bの承諾の有無にかかわらず」としている点が誤りです。
    借地上の建物が借地権者名義で登記されている場合には、その借地権を第三者に対抗できますが、借地借家法ではそれ以上の効果を認めているわけではありません。民法では、賃借権の譲渡、賃借物の転貸には賃貸人の承諾が必要とされているので、第三者は甲地所有者Bの承諾があるときに限り、Bに対して借地権を主張できます(民法612条1項)。
    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    賃借人が賃貸借契約の目的物を第三者に転貸する場合、賃貸人の承諾は不要である。R6-9-4
    Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。R4-6-2
    ①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。R3⑫-9-2
    AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を20年とする借地契約である場合には、AはBの承諾の有無にかかわらず、借地権をCに対して譲渡することができ、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。H17-13-4
    Bが、乙建物をEに譲渡しようとする場合において、Eが甲地の賃借権を取得してもAに不利となるおそれがないにもかかわらず、Aがその賃借権の譲渡を承諾しないときは、Bは、裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる。H15-13-3
  2. [正しい]。借地上の建物を第三者に譲渡しようとするとき、土地所有者の不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権の譲渡や転貸についての承諾を得られない場合には、借地権者は裁判所へ承諾に代わる許可をするよう申し立てることが可能です(借地借家法19条1項)。よって、借地権者Aは裁判所に申立てを行うことができます。
    借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
    借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは、裁判所は、その第三者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。H23-11-3
  3. 誤り。借地権や建物の譲渡にあたって賃借人Dの同意は必要ありません。賃借人が建物の引渡しを受けていれば、譲受人に対して建物賃借権を対抗できるので賃借人の立場は十分に保護されるからです。
  4. 誤り。賃借権の譲渡や転貸には、所有者の承諾が必要となるのが民法の原則です。事業用定期借地権等であっても、借地権を譲渡するときには賃貸人の承諾を得なければなりません(民法612条1項)。
    賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
    賃借人が賃貸借契約の目的物を第三者に転貸する場合、賃貸人の承諾は不要である。R6-9-4
    Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。R4-6-2
    ①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。R3⑫-9-2
    甲地上のA所有の建物が登記されている場合には、AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば、Bの承諾の有無にかかわらず、CはBに対して甲地の借地権を主張できる。H17-13-1
    Bが、乙建物をEに譲渡しようとする場合において、Eが甲地の賃借権を取得してもAに不利となるおそれがないにもかかわらず、Aがその賃借権の譲渡を承諾しないときは、Bは、裁判所にAの承諾に代わる許可をするよう申し立てることができる。H15-13-3
したがって正しい記述は[2]です。