借地借家法(土地)(全26問中11問目)

No.11

Aが居住用の甲建物を所有する目的で、期間30年と定めてBから乙土地を賃借した場合に関する次の記述のうち、借地借家法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。なお、Aは借地権登記を備えていないものとする。
平成28年試験 問11
  1. Aが甲建物を所有していても、建物保存登記をAの子C名義で備えている場合には、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたDに対して、Aは借地権を対抗することができない。
  2. Aが甲建物を所有していても、登記上の建物の所在地番、床面積等が少しでも実際のものと相違している場合には、建物の同一性が否定されるようなものでなくても、Bから乙土地を購入して所有権移転登記を備えたEに対して、Aは借地権を対抗することができない。
  3. AB間の賃貸借契約を公正証書で行えば、当該契約の更新がなく期間満了により終了し、終了時にはAが甲建物を収去すべき旨を有効に規定することができる。
  4. Aが地代を支払わなかったことを理由としてBが乙土地の賃貸借契約を解除した場合、契約に特段の定めがないときは、Bは甲建物を時価で買い取らなければならない。

正解 1

問題難易度
肢173.4%
肢28.0%
肢38.7%
肢49.9%

解説

  1. [正しい]。借地上に、借地権者名義で登記した建物を有する場合は、その借地権を第三者に対抗できます(借地借家法10条1項)。しかし本肢では、建物の名義人(C)と借地権者(A)が異なるため、AはDに対して借地権を対抗できません。
    借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。
    Bは、甲土地につき借地権登記を備えなくても、Bと同姓でかつ同居している未成年の長男名義で保存登記をした建物を甲土地上に所有していれば、甲土地の所有者が替わっても、甲土地の新所有者に対し借地権を対抗することができる。H30-11-4
    ケース①では、賃借人は、甲土地の上に登記されている建物を所有している場合には、甲土地が第三者に売却されても賃借人であることを当該第三者に対抗できるが、ケース②では、甲土地が第三者に売却された場合に賃借人であることを当該第三者に対抗する方法はない。H26-11-2
    二筆以上ある土地の借地権者が、そのうちの一筆の土地上に登記ある建物を所有し、登記ある建物がない他方の土地は庭として使用するために賃借しているにすぎない場合、登記ある建物がない土地には、借地借家法第10条第1項による対抗力は及ばない。H25-12-3
    建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において、借地権の登記がなくても、その土地上の建物に借地人が自己を所有者と記載した表示の登記をしていれば、借地権を第三者に対抗することができる。H24-11-1
    甲土地につき、Bが建物を所有して小売業を行う目的で存続期間を30年とする土地の賃貸借契約を締結している期間の途中で、Aが甲土地をCに売却してCが所有権移転登記を備えた場合、当該契約が公正証書でなされていても、BはCに対して賃借権を対抗することができない場合がある。H18-13-4
    Bが、乙建物につき自己名義の所有権の保存登記をしている場合は、甲地につき賃借権の登記をしていないときでも、甲地をAから譲渡され所有権移転登記を受けたCに対し、甲地の賃借権を対抗できる。H15-13-1
  2. 誤り。登記上の建物の所在地番、床面積等が実際のものと多少異なっている場合であっても、建物の同一性が肯定されるものならば、登記している建物に該当します。よって、AはEに対して借地権を第三者に対抗することができます(最判昭40.3.17)。
    地上権ないし賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違であるような場合には、「建物保護ニ関スル法律」第一条第一項にいう「登記シタル建物ヲ有スル」場合にあたるものと解すべきである。
  3. 誤り。更新がない旨を定めるには定期借地権を利用する必要がありますが、期間30年の居住用建物を目的として、更地で返還する定期借地権を設定することはできません。3種類の定期借地権はそれぞれ以下の理由で設定できません。
    一般定期借地権
    存続期間は50年以上なので、30年の契約はできません。
    事業用定期借地権等
    居住用の建物の所有を目的とするので使えません。
    建物譲渡特約付借地権
    建物を収去して(更地で)返還するという条件があるので使えません。
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  4. 誤り。借地権の存続期間が満了して契約更新がないとき、借地権者は、借地上の建物の買取りを請求することができます(借地借家法13条1項)。債務不履行や解約申入れによる契約解除で終了した場合には、上記の「期間満了+更新なし」という条件に合致しないので、建物買取請求権は認められません(最判昭35.2.9)。
    借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
    借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は借地法第四条第二項による建物等買取請求権を有しない。
したがって正しい記述は[1]です。