条件・期間・時効(全17問中1問目)
No.1
A所有の甲土地について、Bが所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはいくつあるか。- AがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。
- Bの取得時効が完成した後に、AがDに対して甲土地を売却しDが所有権移転登記を備え、Bが、Dの登記の日から所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をDに対抗することができる。
- Bの取得時効完成後、Bへの所有権移転登記がなされないままEがAを債務者として甲土地にAから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、Bがその後引き続き所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Eの抵当権は消滅する。
令和5年試験 問6
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- なし
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正解 3
問題難易度
肢125.4%
肢232.1%
肢334.7%
肢47.8%
肢232.1%
肢334.7%
肢47.8%
分野
科目:1 - 権利関係細目:4 - 条件・期間・時効
解説
- 正しい。CはBにとって時効完成前に登場した第三者になります。時効取得者は、時効完成前の第三者に対して、登記なくして所有権を主張することが可能です(最判昭41.11.22)。
不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる。
Bが甲土地の所有権を時効取得した場合、Bは登記を備えなければ、その所有権を時効完成時において所有者であったCに対抗することはできない。(R4-10-4)第三者のなした登記後に時効が完成して不動産の所有権を取得した者は、当該第三者に対して、登記を備えなくても、時効取得をもって対抗することができる。(R3⑫-6-3)Bが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したFは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。(R1-1-4)Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に、Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合、Bは、Cに対し、登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。(H27-4-3)甲土地につき、時効により所有権を取得したBは、時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して、時効による所有権の取得を主張することができない。(H24-6-1)Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。(H22-4-3) - 正しい。時効取得者と時効完成後に登場した第三者は対抗関係に立ちますから、先に登記を備えたほうが他方に対して所有権を主張できます。本肢の論点は、第三者が先に所有権移転登記を受けた場合において、時効取得者が引き続き占有を続けたときに時効取得が認められるかどうかという内容です。この場合、占有者がそのまま所有権移転登記の時から時効完成までに必要な期間占有すれば、再び時効完成によりその物を取得することができます(最判昭36.7.20)。
不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗しえないが、第三者の右登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合には、その第三者に対し、登記を経由しなくとも時効取得をもつて対抗しうるものと解すべきである。
- 正しい。肢イと同じく時効による再取得についてです。本肢は、所有権の移転登記ではなく抵当権の設定登記ですが、この場合においても抵当権を容認するような特段の事情がない限り、再度の時効取得が認められます。このとき抵当権は、債務者・抵当権設定者以外の者に時効取得されたことにより消滅します(最判平24.3.16民法396条)。
不動産の取得時効の完成後,所有権移転登記がされることのないまま,第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において,上記不動産の時効取得者である占有者が,その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を授用したときは,上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り,上記占有者が,上記不動産を時効取得する結果,上記抵当権は消滅する。
債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
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