宅建試験過去問題 令和7年試験 問44

問44

宅地建物取引業者は、犯罪による収益の移転防止に関する法律第2条第2項の特定事業者に該当するが、宅地建物取引業者Aの行為に関する次の記述のうち、同法に違反するものはどれか。
  1. Aは、土地付建物の売買を行うに際して、当該売買契約の相手方である買主が自然人であったので、氏名、住居、生年月日、取引を行う目的及び職業について、確認した。
  2. Aは、価額が5,000万円の土地付建物の売買を行ったとき、直ちに、一定の方法により、当該売買契約の相手方である買主の確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の事項に関する記録を作成して保存していたが、当該取引の行われた日から5年経過したので、当年度末に当該記録を廃棄した。
  3. Aは、土地付建物の売買契約の相手方である買主から収受した代金について犯罪により得た収益であるとの疑いがあったので、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。
  4. Aは、取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を的確に行うため、顧客と実際に接する営業担当者に対する教育訓練を実施した。

正解 2

問題難易度
肢19.3%
肢277.7%
肢38.3%
肢44.7%

解説

  1. 違反しない。犯罪収益移転防止法では、宅地建物取引業者を含む特定事業者に対し、特定取引を行うに際して、新規顧客の本人確認等を義務付けています。宅地建物取引業者が行う宅地建物の売買契約の締結・代理・媒介が特定取引として指定されており、顧客が自然人のときは、氏名・住居・生年月日、取引目的、職業が確認事項となります(犯収法4条1項)。確認した事項については記録(確認記録)を作成し、取引終了日から7年間保存しなければなりません。
    ※法人のときは、名称・主たる事務所の所在地、取引目的、事業内容、実質的支配者の本人特定事項
    特定事業者(第二条第二項第四十五号に掲げる特定事業者(第十二条において「弁護士等」という。)を除く。以下同じ。)は、顧客等との間で、別表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務(以下「特定業務」という。)のうち同表の下欄に定める取引(次項第二号において「特定取引」といい、同項前段に規定する取引に該当するものを除く。)を行うに際しては、主務省令で定める方法により、当該顧客等について、次に掲げる事項の確認を行わなければならない。
    一 本人特定事項(自然人にあっては氏名、住居(本邦内に住居を有しない外国人で政令で定めるものにあっては、主務省令で定める事項)及び生年月日をいい、法人にあっては名称及び本店又は主たる事務所の所在地をいう。以下同じ。)
    二 取引を行う目的
    三 当該顧客等が自然人である場合にあっては職業、当該顧客等が法人である場合にあっては事業の内容
    四 当該顧客等が法人である場合において、その事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にあるものとして主務省令で定める者があるときにあっては、その者の本人特定事項
  2. [違反する]。5年ではありません。宅地建物取引業者は、宅地建物の売買契約の締結・代理・媒介の取引を行った場合、直ちに、①確認記録を検索するための事項、②取引の日付、③取引の種類、④取引に係る財産の価額、⑤財産移転に係る移転元又は移転先の名義 について記録(取引記録)を作成しなければなりません。この取引記録の保存期間は、取引日から7年間です(犯収法7条1項・3項)。
    特定事業者(次項に規定する特定事業者を除く。)は、特定業務に係る取引を行った場合には、少額の取引その他の政令で定める取引を除き、直ちに、主務省令で定める方法により、顧客等の確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の主務省令で定める事項に関する記録を作成しなければならない。

    特定事業者は、前二項に規定する記録(以下「取引記録等」という。)を、当該取引又は特定受任行為の代理等の行われた日から七年間保存しなければならない。
  3. 違反しない。犯収法における特定事業者は、特定業務に係る取引で収受した財産が犯罪収益・テロ資金である、又はその取引がマネーロンダリングであると疑われる場合には、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出なければなりません(犯収法8条1項)。宅地建物取引業者の届出先となる行政庁は免許権者です。
    特定事業者(第二条第二項第四十六号から第四十九号までに掲げる特定事業者を除く。)は、特定業務に係る取引について、当該取引において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあるかどうか、又は顧客等が当該取引に関し組織的犯罪処罰法第十条の罪若しくは麻薬特例法第六条の罪に当たる行為を行っている疑いがあるかどうかを判断し、これらの疑いがあると認められる場合においては、速やかに、政令で定めるところにより、政令で定める事項を行政庁に届け出なければならない。
  4. 違反しない。犯収法における特定事業者は、取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を的確に行うため、当該情報を最新の内容に保つ措置を講じるほか、次の措置等を講じるように努めることとされています(犯収法11条)。
    1. 使用人に対する教育訓練の実施
    2. 取引時確認等の措置の実施に関する規程の作成
    3. 取引時確認等の措置の的確な実施等のため統括管理者の選任
    顧客と接する従業者の教育訓練は、努力義務の一つであるため違反しません。
    特定事業者は、取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置(以下この条において「取引時確認等の措置」という。)を的確に行うため、当該取引時確認をした事項に係る情報を最新の内容に保つための措置を講ずるものとするほか、次に掲げる措置を講ずるように努めなければならない。
    一 使用人に対する教育訓練の実施
    二 取引時確認等の措置の実施に関する規程の作成
    三 取引時確認等の措置の的確な実施のために必要な監査その他の業務を統括管理する者の選任
    四 その他第三条第三項に規定する犯罪収益移転危険度調査書の内容を勘案して講ずべきものとして主務省令で定める措置
したがって違反するものは[2]です。

参考URL: 犯罪収益移転防止法の概要について(国土交通省PDF)
https://www.mlit.go.jp/common/001147570.pdf