宅建試験過去問題 令和2年12月試験 問20

問20

土地区画整理法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  1. 市町村が施行する土地区画整理事業の施行後の宅地の価額の総額が土地区画整理事業の施行前の宅地の価額の総額より減少した場合においては、その差額に相当する金額を、従前の宅地に存する建築物について賃借権を有する者に対して支払わなければならない。
  2. 施行者は、仮換地を指定した時に、清算金を徴収し、又は交付しなければならない。
  3. 換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。
  4. 土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の換地計画においては、災害を防止し、及び衛生の向上を図るために宅地の地積の規模を適正にする特別な必要があると認められる場合は、その換地計画に係る区域内の地積が小である宅地について、過小宅地とならないように換地を定めることができる。

正解 3

問題難易度
肢19.8%
肢26.6%
肢352.8%
肢430.8%

解説

  1. 誤り。地方公共団体・国土交通大臣・独立行政法人等が行う公共施行において、土地区画整理事業の施行後の宅地の価額の総額が、土地区画整理事業の施行前の宅地の価額の総額より減少した場合には、施行者は、従前の宅地の所有者とその宅地について地上権・賃借権その他使用収益できる権利を持つ者に対して、その差額を減価補償金として交付しなければなりません(土地区画整理法109条)。
    減価補償金の交付対象は宅地について使用収益できる権利を持つ者ですので、借地権を有する者は対象となりますが、宅地上の建物を賃借しているだけの者には交付されません。
    第三条第四項若しくは第五項、第三条の二又は第三条の三の規定による施行者は、土地区画整理事業の施行により、土地区画整理事業の施行後の宅地の価額の総額が土地区画整理事業の施行前の宅地の価額の総額より減少した場合においては、その差額に相当する金額を、その公告があつた日における従前の宅地の所有者及びその宅地について地上権、永小作権、賃借権その他の宅地を使用し、又は収益することができる権利を有する者に対して、政令で定める基準に従い、減価補償金として交付しなければならない。
  2. 誤り。換地により、従前の宅地と換地の資産価値に不均衡が生じる場合には、その差を金銭で精算する旨を換地計画に定めることになります。これが「清算金」です。清算金の徴収と交付は、換地処分の公告があった日の翌日に確定します(土地区画整理法110条1項)。仮換地の指定時にも、仮清算として、清算金を徴収または交付できますが、実施は任意なので、しなければならないとする本肢は誤りです(土地区画整理法102条1項)。
    施行者は、第百三条第四項の公告があつた場合においては、第百四条第八項の規定により確定した清算金を徴収し、又は交付しなければならない。この場合において、確定した清算金の額と第百二条第一項の規定により徴収し、又は交付した仮清算金の額との間に差額があるときは、施行者は、その差額に相当する金額を徴収し、又は交付しなければならない。
    施行者は、第九十八条第一項の規定により仮換地を指定した場合又は第百条第一項の規定により使用し、若しくは収益することを停止させた場合において、必要があると認めるときは、第九十四条に定めるところに準じて仮に算出した仮清算金を、清算金の徴収又は交付の方法に準ずる方法により徴収し、又は交付することができる。
    換地計画において定められた清算金は、換地処分の公告があった日の翌日において確定する。R5-20-1
  3. [正しい]。換地計画において換地を定める場合においては、換地と従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければなりません(土地区画整理法89条1項)。換地は、可能な限り従前の宅地と同一条件になるようにするという原則です。
    換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。
    換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければならない。R3⑩-20-2
  4. 誤り。換地は、それぞれの従前の宅地に対して照応するように施行者が定めることが原則です。しかし、地積が小さい宅地につき地積の規模を適正にする特別な必要があると認められる場合においては、地方公共団体・国土交通大臣・独立行政法人等が行う公共施行に限り、土地区画整理審議会の同意を得て、過小宅地とならないように(一定の地積以上の宅地となるように)換地を定めることができます(土地区画整理法91条1項)。
    本肢は組合施行ですので、この規定を使って換地計画を作成することはできません。判例では、組合施行は必ずしも公共性の高い事業とは言えず、多数決によって施行されるため、多数派である小規模宅地の所有者の利益のために、少数派である大規模宅地の所有者が犠牲となる可能性があることを示しています(東京高裁平21.7.30)。
    第三条第四項若しくは第五項、第三条の二又は第三条の三の規定により施行する土地区画整理事業の換地計画においては、災害を防止し、及び衛生の向上を図るため宅地の地積の規模を適正にする特別な必要があると認められる場合においては、その換地計画に係る区域内の地積が小である宅地について、過小宅地とならないように換地を定めることができる。
したがって正しい記述は[3]です。