宅建試験過去問題 平成28年試験 問10

問10

甲建物を所有するAが死亡し、相続人がそれぞれAの子であるB及びCの2名である場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
  1. Bが甲建物を不法占拠するDに対し明渡しを求めたとしても、Bは単純承認をしたものとはみなされない。
  2. Cが甲建物の賃借人Eに対し相続財産である未払賃料の支払いを求め、これを収受領得したときは、Cは単純承認をしたものとみなされる。
  3. Cが単純承認をしたときは、Bは限定承認をすることができない。
  4. Bが自己のために相続の開始があったことを知らない場合であっても、相続の開始から3か月が経過したときは、Bは単純承認をしたものとみなされる。

正解 4

問題難易度
肢110.0%
肢211.1%
肢311.6%
肢467.3%

解説

  1. 正しい。所定の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときのほか、相続人が次に挙げる行為を行った場合、単純承認をしたものとみなされます(民法921条)。
    1. 相続の開始を知りながら、相続財産の全部又は一部を処分したとき(保存行為及び短期賃貸借を除く)。
    2. 限定承認又は相続の放棄をした後に、財産を隠したり消費したり、悪意で財産目録に記載しなかったとき
    不法占拠者に対する明渡し請求は相続財産の保存行為に当たるため、保存行為を行ったBが単純承認したとみなされることはありません。
    次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
    一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
    二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
    三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
    Bが自己のために相続の開始があったことを知らない場合であっても、相続の開始から3か月が経過したときは、Bは単純承認をしたものとみなされる。H28-10-4
    C及びDが相続開始の事実を知りながら、Bが所有していた財産の一部を売却した場合には、C及びDは相続の単純承認をしたものとみなされる。H19-12-2
  2. 正しい。相続開始後に、相続人が相続した債権の回収を行い、その債権の金銭を受け取ることは相続財産の処分に当たります。よって、Cは単純承認したものとみなされます(最判昭37.6.31)。
    相続人が相続開始後、相続放棄前に相続債権の取立をして、これを収受領得した場合には、民法第九二一条第一号にいわゆる相続財産の一部を処分した場合に該当し、相続の単純承認をしたものとみなされる。
  3. 正しい。相続人が複数である場合、相続の限定承認は、相続人全員が共同して行わなければなりません(民法923条)。よって、Cが単純承認したときは、Bは限定承認をすることができなくなります。
    相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
    Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して、相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば、Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。H29-6-4
    Cが単純承認を希望し、Dが限定承認を希望した場合には、相続の開始を知った時から3か月以内に、Cは単純承認を、Dは限定承認をしなければならない。H19-12-1
    相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。H14-12-2
  4. [誤り]。相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3カ月以内に限定承認又は相続の放棄をしなかった場合、相続人は、単純承認をしたものとみなされます(民法921条2号)。したがって、Bが相続の開始があったことを知らない場合には、起算点がないので3か月を経過しても単純承認とはなりません。
    Bが甲建物を不法占拠するDに対し明渡しを求めたとしても、Bは単純承認をしたものとはみなされない。H28-10-1
    C及びDが相続開始の事実を知りながら、Bが所有していた財産の一部を売却した場合には、C及びDは相続の単純承認をしたものとみなされる。H19-12-2
したがって誤っている記述は[4]です。