宅建試験過去問題 平成26年試験 問4

問4

AがBとの間で、CのBに対する債務を担保するためにA所有の甲土地に抵当権を設定する場合と根抵当権を設定する場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. 抵当権を設定する場合には、被担保債権を特定しなければならないが、根抵当権を設定する場合には、BC間のあらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権とすることができる。
  2. 抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には登記が必要であるが、根抵当権を設定した旨を第三者に対抗する場合には、登記に加えて、債務者Cの異議を留めない承諾が必要である。
  3. Bが抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができるが、Bが根抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することはできない。
  4. 抵当権の場合には、BはCに対する他の債権者の利益のために抵当権の順位を譲渡することができるが、元本の確定前の根抵当権の場合には、Bは根抵当権の順位を譲渡することができない。

正解 4

問題難易度
肢118.8%
肢211.1%
肢310.6%
肢459.5%

解説

  1. 誤り。抵当権を設定する場合には、被担保債権を特定しなければならないという記述は正しいです。
    一方、根抵当権を設定する場合には、被担保債権の特定は不要ですが、債権の範囲を一定の種類の取引によって生ずるものに限定する必要があります。あらゆる範囲の不特定の債権を極度額の限度で被担保債権とすること(包括根抵当権)は禁止されています(民法398条の2)。
    前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
    根抵当権は、根抵当権者が債務者に対して有する現在及び将来の債権をすべて担保するという内容で、設定することができる。H12-5-1
  2. 誤り。抵当権も根抵当権も登記が第三者対抗要件となっています。根抵当権であっても「債務者Cの異議を留めない承諾」は必要ないので、本肢は誤りです。
  3. 誤り。Aは物上保証人という立場ですが、物上保証人には人的保証のように催告の抗弁権や検索の抗弁権はありません。このため、抵当権・根抵当権のいずれにおいても主たる債務者に催告するように求めることはできません。したがって、前半部分の「Bが抵当権を実行する場合には、AはまずCに催告するように請求することができる」をいう記述が誤りです。
  4. [正しい]。抵当権の場合に順位を譲渡できる旨の記述は適切です(民法376条1項)。一方、元本確定前の根抵当権では、枠の大きさが決まっているだけの状態で債権額が確定していないため、他の債権者の利益のためにする処分(放棄・順位譲渡・順位放棄)は転抵当を除いて認められません(民法398条の11)。ただし、極度額の枠の譲渡については、全部譲渡、一部譲渡、共有という制度が抵当権とは別に設けられています。元本確定後は原則として根抵当権でない抵当権と同じになるので、処分は自由にできます。
    抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
    元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない。
したがって正しい記述は[4]です。