宅建試験過去問題 平成16年試験 問6(改題)

問6

AとBが1,000万円の連帯債務をCに対して負っている(負担部分は1/2ずつ)場合と、Dが主債務者として、Eに1,000万円の債務を負い、FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合の次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. 1,000万円の返済期限が到来した場合、CはA又はBにそれぞれ500万円までしか請求できないが、EはDにもFにも1,000万円を請求することができる。
  2. CがBに対して債務の全額を免除しても、AはCに対してなお1,000万円の債務を負担しているが、EがFに対して連帯保証債務の全額を免除すれば、Dも債務の全額を免れる。
  3. Aが1,000万円を弁済した場合には、Aは500万円についてのみBに対して求償することができ、Fが1,000万円を弁済した場合にも、Fは500万円についてのみDに対して求償することができる。
  4. Aが債務を承認して時効が更新してもBの連帯債務の時効の進行には影響しないが、Dが債務を承認して時効が更新した場合にはFの連帯保証債務に対しても時効更新の効力を生ずる。

正解 4

問題難易度
肢113.9%
肢28.9%
肢312.8%
肢464.4%

解説

A・B・Cの関係は連帯債務、D・E・Fの関係はDを主債務者とした連帯保証です。
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  1. 誤り。
    【連帯債務】
    債権者はどの連帯債務者に対しても、債務の全部又は一部の履行を請求することが可能です(民法436条)。よって、債権者Cは連帯債務者AとBのどちらにも全額(1,000万円)の請求をすることができます
    【連帯保証】
    保証人は主債務者が債務を履行しないときに履行責任を負います(民法466条1項)。既に返済期限が到来しているので、債権者Eは、主債務者Dにも連帯保証人Fにも全額(1,000万円)の請求をすることができます。
    債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
    保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
    DがCに対して債務を免除した場合でも、特段の合意がなければ、DはAに対してもBに対しても、弁済期が到来した300万円全額の支払を請求することができる。R3⑩-2-3
    Cは、Aに対して2,000万円の請求をすると、それと同時には、Bに対しては、全く請求をすることができない。H13-4-1
  2. 誤り。
    【連帯債務】
    連帯債務者の1人に対して生じた事由は、別段の定めがなければ、更改、相殺、混同を除き他の債務者に対して効力を生じません(民法441条)。これは、連帯保証において保証人に生じた事由でも同様です(民法458条)。
    免除は相対効なので、連帯債務者の1人に対する免除は、他の連帯債務者に効力が及びません。よって、残った連帯債務者Aの債務は従前の1,000万円のままです。
    【連帯保証】
    債権者Eが連帯保証人Fに全額免除をすると連帯保証債務は消滅しますが、Dの主たる債務はなくなりません
    第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。 ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
    第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する。
    DがAに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、BとCがDに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。R3⑩-2-1
    DがAに対して履行の請求をした場合、B及びCがそのことを知らなくても、B及びCについては、その効力が生じる。H29-8-1
  3. 誤り。
    【連帯債務】
    連帯債務者の1人が弁済したときは、債務消滅額のうち他の連帯債務者各自が負担すべき部分の額を求償できます(民法442条1項)。本肢の場合、Aは1,000万円の債務を消滅させており、債務の負担割合が2分の1ずつなので、AはBが負担すべきだった500万円をBに対して求償できます。
    【連帯保証】
    保証人が自己の財産で主債務者の債務を消滅させた場合、その保証人は主債務者に対し、そのために支出した全額を求償できます(民法459条1項)。よって、連帯保証人Fは1,000万円全部をDに対して求償できます
    連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。
    保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。
    CがDに対して100万円を弁済した場合は、Cの負担部分の範囲内であるから、Cは、A及びBに対して求償することはできない。H29-8-4
  4. [正しい]。
    【連帯債務】
    肢2の説明通り、更改、相殺、混同以外の事由は、他の連帯債務者に影響を与えません。よって、Aの債務の承認はBの時効の進行に影響しません。
    【連帯保証】
    主債務者に履行の請求、時効の完成猶予・更新があった場合、その効力は保証人に及びます(民法457条1項)。よって、主債務者Dの承認による時効の更新により、連帯保証人Fの時効も更新されることになります。
    主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。
    Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ばず、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。Dが、Eに対して履行を請求した効果はFに及び、Fに対して履行を請求した効果はEに及ばない。H20-6-2
    Cの保証債務にBと連帯して債務を負担する特約がない場合、Bに対する履行の請求その他時効の完成猶予及び更新は、Cに対してもその効力を生ずる。H15-7-4
したがって正しい記述は[4]です。