土地区画整理法(全27問中3問目)

No.3

次の記述のうち、土地区画整理法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
令和4年試験 問20
  1. 土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日以後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある建築物の新築を行おうとする者は、土地区画整理組合の許可を受けなければならない。
  2. 土地区画整理組合は、定款に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができる。
  3. 仮換地を指定したことにより、使用し、又は収益することができる者のなくなった従前の宅地については、当該宅地を使用し、又は収益することができる者のなくなった時から換地処分の公告がある日までは、施行者が当該宅地を管理する。
  4. 清算金の徴収又は交付に関する権利義務は、換地処分の公告によって換地についての所有権が確定することと併せて、施行者と換地処分時点の換地所有者との間に確定的に発生するものであり、換地処分後に行われた当該換地の所有権の移転に伴い当然に移転する性質を有するものではない。

正解 1

問題難易度
肢156.7%
肢211.5%
肢313.5%
肢418.3%

解説

  1. [誤り]。土地区画整理組合ではなく、都道府県知事の許可が必要です。
    土地区画整理事業の認可の公告があった後は、換地処分の公告がある日まで、事業の施行の障害のおそれのある土地の形質変更、建築物や工作物の新築、改築、増築、移動が容易ではない物件の設置が制限されます。組合施行の土地区画整理事業において、それらの建築行為を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(土地区画整理法76条1項)。
    次に掲げる公告があつた日後、第百三条第四項の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあつては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあつては都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が第三条第四項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、当該市の長。以下この条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
    土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更を行おうとする者は、当該土地区画整理組合の許可を受けなければならない。R3⑩-20-3
    土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日以後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある建築物その他の工作物の新築を行おうとする者は、都道府県知事及び市町村長の許可を受けなければならない。H30-21-2
    土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更を行おうとする者は、当該土地区画整理組合の許可を受けなければならない。H28-21-4
    土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日後、換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更を行おうとする者は、当該土地区画整理組合の許可を受けなければならない。H23-21-1
    土地区画整理組合の設立の認可の公告があった日から当該組合が行う土地区画整理事業に係る換地処分の公告がある日までは、施行地区内において、事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更や建築物の新築等を行おうとする者は、当該組合の許可を受けなければならない。H19-24-4
    土地区画整理事業の施行地区内においては、土地区画整理法第76条の規定により、一定の建築行為等について、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を必要とする規制がなされるが、仮換地における当該建築行為等については、仮換地の換地予定地的な性格にかんがみ、当該規制の対象外となっている。H16-22-1
  2. 正しい。換地処分は、換地計画に係る区域の全部について工事が完了した後に行うのが原則ですが、組合施行では定款で定めている場合に限り、工事完了前においても行うことができます(土地区画整理法103条2項)。
    換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了した後において、遅滞なく、しなければならない。ただし、規準、規約、定款又は施行規程に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する以前においても換地処分をすることができる。
    ※個人施行では規約又は規準、会社施行では定款、公共施行では施行規程
    個人施行者は、規準又は規約に別段の定めがある場合においては、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事が完了する以前においても換地処分をすることができる。H25-20-1
    換地処分は、換地計画に係る区域の全部について土地区画整理事業の工事がすべて完了した後でなければすることができない。H18-24-3
  3. 正しい。仮換地の指定又は工事のために使用収益を停止され、使用収益をする者のいなくなった従前の宅地は、換地処分の公告がある日まで施行者が管理します(土地区画整理法100条の2)。
    第九十八条第一項の規定により仮換地若しくは仮換地について仮に権利の目的となるべき宅地若しくはその部分を指定した場合又は前条第一項の規定により従前の宅地若しくはその部分について使用し、若しくは収益することを停止させた場合において、それらの処分に因り使用し、又は収益することができる者のなくなつた従前の宅地又はその部分については、当該処分に因り当該宅地又はその部分を使用し、又は収益することができる者のなくなつた時から第百三条第四項の公告がある日までは、施行者がこれを管理するものとする。
    仮換地の指定を受けた場合、その処分により使用し、又は収益することができる者のなくなった従前の宅地は、当該処分により当該宅地を使用し、又は収益することができる者のなくなった時から、換地処分の公告がある日までは、施行者が管理するものとされている。H20-23-4
    土地区画整理組合が仮換地を指定した場合において、当該処分によって使用し又は収益することができる者のなくなった従前の宅地については、換地処分の公告がある日までは、当該宅地の存する市町村がこれを管理する。H14-22-3
  4. 正しい。換地は従前の土地と照応するように定めるのが原則ですが、換地処分により多少の不均衡が生じてしまうのはやむを得ません。そこで土地区画整理法では、その差額を金銭で解消する「清算金」という仕組みを用意しています。換地処分により土地の条件が良くなった所有者は施行者に対し清算金を支払い、逆に条件が悪くなった土地の所有者は施行者から清算金の交付を受けることにより、関係権利当事者間で不均衡を是正することになっています。
    清算金の徴収又は交付に関する権利義務は、換地処分により換地の所有権が確定するとともに、換地所有者と施行者の間に確定的に発生します。換地処分後に換地を別の人に譲渡しても、新所有者に清算金に関する権利義務が移転するわけではありません(土地区画整理法104条8項最判昭45.12.21)。
    例えば、従前の土地が2,000万円、換地が2,200万円として評価される場合、換地所有者は施行者に200万円を支払う義務を負います。このとき200万円を払わないまま換地を2,200万円で他の人に売って、清算金の支払い義務を他の人に押し付けることができるのはおかしいですよね。
    第九十四条の規定により換地計画において定められた清算金は、前条第四項の公告があつた日の翌日において確定する。
    土地区画整理事業による換地処分の確定後換地につき売買による所有権の移転があつても、右換地に関する清算交付金請求権は、整理事業施行者に対する関係において、当然にはこれに伴つて移転しない。
したがって誤っている記述は[1]です。