意思表示(全14問中8問目)
No.8
民法第95条本文は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。」と定めている。これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。平成21年試験 問1
- 意思表示をなすに当たり、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、原則として自らその取消しを主張することができない。
- 表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、民法第95条に基づく意思表示の取消しを主張する意思がない場合は、第三者がその意思表示の取消しを主張することはできない。
- 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容とし、かつ、その旨を相手方に明示的に表示した場合は、法律行為の要素となる。
- 意思表示をなすについての動機は、表意者が当該意思表示の内容としたが、その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は、法律行為の要素とならない。
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正解 4
問題難易度
肢110.7%
肢210.7%
肢38.2%
肢470.4%
肢210.7%
肢38.2%
肢470.4%
分野
科目:1 - 権利関係細目:2 - 意思表示
解説
錯誤とは、「甲土地」を売るつもりだった売主が、その意思に反して「乙土地」を売ると買主に表示してしまった場合、金銭の単位を書き間違えてしまった場合のように、表意者の意思表示に無意識的な誤りがあったことを言います。錯誤には「要素の錯誤」と「動機の錯誤」があり、契約内容のような「要素の錯誤」では表意者は重大な過失がない限り取消しを主張できますが、「動機の錯誤」の場合にはその動機が相手方に明示されていた場合に限り取消しを主張できます。
- 正しい。表意者に重大な過失があるときは、相手方が①悪意または善意重過失のとき、②共通の錯誤に陥っていたときを除いて、表意者は錯誤による取消しを主張することができません(民法95条3項)。
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。 - 正しい。錯誤による取消しは表意者を保護するための規定ですから、表意者自身が意思表示の瑕疵を認めていない場合、第三者が取消しを主張することはできないとされています(最判昭40.9.10※無効→取消し)。
表意者自身において要素の錯誤による意思表示の無効を主張する意思がない場合には、原則として、第三者が右意思表示の無効を主張することは許されない。
売買契約に要素の錯誤があった場合は、Bに代金を貸し付けたCは、Bがその錯誤を認めず、取り消す意思がないときでも、Aに対し、Bに代位して、取り消すことができる。(H13-2-2) - 正しい。動機の錯誤は、表意者が動機を意思表示の内容とし、かつ明示的又は黙示的に表示した場合に限り、法律行為の要素となります(民法95条2項)。
本肢は、表意者が相手方に明示的に表示しているので法律行為の要素となります。前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
- [誤り]。動機の表示が、しぐさなどの黙示的な性質であったとしても、事実関係によっては法律行為の要素となることがあります(最判平1.9.14)。
協議離婚に伴い夫が自己の不動産全部を妻に譲渡する旨の財産分与契約をし、後日夫に二億円余の譲渡所得税が課されることが判明した場合において、右契約の当時、妻のみに課税されるものと誤解した夫が心配してこれを気遣う発言をし、妻も自己に課税されるものと理解していたなど判示の事実関係の下においては、他に特段の事情がない限り、夫の右課税負担の錯誤に係る動機は、妻に黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきである。
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