所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中6問目)

No.6

地役権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
令和2年12月試験 問9
  1. 地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。
  2. 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
  3. 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。
  4. 要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。

正解 1

問題難易度
肢136.7%
肢210.6%
肢327.4%
肢425.3%

解説

  1. [誤り]。時効取得できる地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限ります(民法283条)。本肢は「又は」としているので誤りです。
    地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。
    甲土地の隣接地の所有者が自らが使用するために当該隣接地内に通路を開設し、Aもその通路を利用し続けると、甲土地が公道に通じていない場合には、Aは隣接地に関して時効によって通行地役権を取得することがある。H25-3-4
    通行地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。H22-3-4
    Bが、契約で認められた部分ではない甲土地の部分を、継続かつ表現の形で、乙土地の通行の便益のために利用していた場合でも、契約で認められていない部分については、通行地役権を時効取得することはできない。H14-4-4
  2. 正しい。地役権は、ある土地の便益のために他人の土地を利用できる権利です。甲土地が乙土地のために便益を提供する場合、便益を提供する甲土地を承役地(しょうえきち)、地役権者が所有し便益を受ける乙土地を要役地(ようえきち)と言います。承役地は利用される側、要役地は利用する側と考えればOKです。
    地役権者は、地役権設定契約の定めに従って、承役地を要役地の便益のために利用できるので、本肢は適切な記述です(民法280条)。
    地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。
  3. 正しい。承役地の所有者の特定承継人とは、承役地を買い受けた人などです。地役権の設定やその後の契約で、承役地の所有者が工作物設置・修繕義務を負担する定めがあるときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を承継します(民法286条)。ただし、地役権者がその義務の存在を特定承継人に対抗するためには、その旨の登記をする必要があります。
    設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。
  4. 正しい。地役権には所有権への付従性があり、特段の定めのない限り所有権の移転に伴って移転します(民法281条1項)。要役地の取得者は、その要役地について所有権移転登記をしていれば、地役権の取得についても第三者に対抗することができます(大判大13.3.17)。
    よって、要役地を取得した者が所有権の取得を対抗できるときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗できます。
    地役権は、要役地(地役権者の土地であって、他人の土地から便益を受けるものをいう。以下同じ。)の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする。ただし、設定行為に別段の定めがあるときは、この限りでない。
    要役地が売買されれば買主は当然に地役権を取得し、要役地について所有権移転登記をすれば、地役権の取得も第三者に対抗することができる。
    この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。H14-4-2
したがって誤っている記述は[1]です。