担保物権(全31問中28問目)
No.28
Aは、Bから3,000万円の借金をし、その借入金債務を担保するために、A所有の甲地と、乙地と、乙地上の丙建物の上に、いずれも第1順位の普通抵当権(共同抵当)を設定し、その登記を経た。その後甲地については、第三者に対して第2順位の抵当権が設定され、その登記がされたが、第3順位以下の担保権者はいない。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。平成13年試験 問7
- 甲地が1,500万円、乙地が2,000万円、丙建物が500万円で競売され、同時に代価を配当するとき、Bはその選択により、甲地及び乙地の代金のみから優先的に配当を受けることができる。
- 甲地のみが1,500万円で競売され、この代価のみがまず配当されるとき、Bは、甲地にかかる後順位抵当権者が存在しても、1,500万円全額(競売費用等は控除)につき配当を受けることができる。
- Bは、Aの本件借入金債務の不履行による遅延損害金については、一定の場合を除き、利息その他の定期金と通算し、最大限、最後の2年分しか、本件登記にかかる抵当権の優先弁済権を主張することができない。
- Bと、甲地に関する第2順位の抵当権者は、合意をして、甲地上の抵当権の順位を変更することができるが、この順位の変更は、その登記をしなければ効力が生じない。
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正解 1
問題難易度
肢150.9%
肢217.0%
肢314.6%
肢417.5%
肢217.0%
肢314.6%
肢417.5%
分野
科目:1 - 権利関係細目:6 - 担保物権
解説
1つの債権の担保として複数の不動産に抵当権を付けることを「共同抵当」と言います。Bのような共同抵当権者は、共同抵当の中の全部または一部に抵当権を実行することができます。
- [誤り]。本肢は3つの不動産全部が同時に競売され、配当が行われたケースです(同時配当)。共同抵当の複数の不動産を競売した場合、各不動産の価格に応じて債権負担を按分します(民法392条1項)。抵当権者が選択できるわけではありません。
具体的には以下の計算による割合で3,000万円の配当を受けます。- 甲地:乙地:丙建物=1,500万円:2,000万円:500万円=3:4:1
- 甲地の分:3,000万円×(3/8)=1,125万円
- 乙地の分:3,000万円×(4/8)=1,500万円
- 丙建物の分:3,000万円×(1/8)=375万円
債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する。
- 正しい。本肢は共同抵当不動産のうち1つが競売され、配当が行われたケースです(異時配当)。甲地には後順位抵当権者がいますが、これに関係なくBは1,500万円全額の配当を受けられます。ただし、このままだと後順位抵当権者にとって酷なので、後順位抵当権者は共同抵当権者が同時配当した場合に受け取れるはずだった金額を限度として、共同抵当権者の抵当権を代位行使することができます(民法392条2項)。すなわち、第三者はBが有している乙地・乙地上の建物の抵当権を実行する権利を得ます。処分される順番によって後抵当順位権者の受ける配当が変わらないようにするためです。
債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、ある不動産の代価のみを配当すべきときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる。この場合において、次順位の抵当権者は、その弁済を受ける抵当権者が前項の規定に従い他の不動産の代価から弁済を受けるべき金額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる。
- 正しい。抵当権を行使したことで得られる優先弁済権の範囲は、原則として元本と最後の2年分の"利息その他の定期金"及び"遅延損害金"です。「最後の2年」というのは競売の配当実施の日から遡った2年間を指します(民法375条2項)。
"利息その他の定期金"及び"遅延損害金"は通算して2年分までしか請求できません。例えば、最後の2年に利息と遅延損害金のどちらも発生していたとしても、利息2年分+遅延損害金2年分の請求はできず、利息2年分、利息1年分+遅延損害金1年分、遅延損害金2年分のように、併せて2年分までしか優先弁済を受けられないということです。前項の規定は、抵当権者が債務の不履行によって生じた損害の賠償を請求する権利を有する場合におけるその最後の二年分についても適用する。ただし、利息その他の定期金と通算して二年分を超えることができない。
普通抵当権でも、根抵当権でも、遅延損害金については、最後の2年分を超えない利息の範囲内で担保される。(H15-6-4) - 正しい。各抵当権者は合意によって順位の変更が可能ですが、この変更の効力を得るには登記が必要です(民法374条)。よって、Bと第2順位の抵当権者が順位の変更をするには、合意に加えて、登記をする必要があります。
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。
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