所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中26問目)

No.26

Aは、自己所有の建物をBに売却したが、Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
平成16年試験 問3
  1. Cが何らの権原なくこの建物を不法占有している場合、Bは、Cに対し、この建物の所有権を対抗でき、明渡しを請求できる。
  2. DがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Bは、Dに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。
  3. この建物がAとEとの持分1/2ずつの共有であり、Aが自己の持分をBに売却した場合、Bは、Eに対し、この建物の持分の取得を対抗できない。
  4. Aはこの建物をFから買い受け、FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合、Bは、Fに対し、この建物の所有権を対抗できる。

正解 2

問題難易度
肢18.4%
肢252.5%
肢324.0%
肢415.1%

解説

  1. 正しい。何らの権原なくこの建物を不法占有している者は177条にいう第三者には該当しません(最判昭25.12.19)。よって、Bは建物の登記なくしてCに所有権を対抗でき、所有権に基づく返還請求権を行使できます。
    不動産の不法占有者は、民法第一七七条にいう「第三者」には当らない。
    甲建物をDが不法占拠している場合、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。R3⑫-9-3
    Aと売買契約を締結して所有権を取得したEは、所有権の移転登記を備えていない場合であっても、正当な権原なく甲土地を占有しているFに対し、所有権を主張して甲土地の明渡しを請求することができる。H19-3-3
  2. [誤り]。Dは建物の引渡しを受けており、賃借権の対抗要件を備えています。借主が賃借権の対抗要件を備えている場合に、建物が譲渡され所有権が移った場合、賃貸人の地位は当然に新所有者に移転します(民法605条の2第1項)。ただし、地位の移転を賃借人に対抗するには所有権の移転登記が必要とされています(民法605条の2第3項)。この規定には賃借人を賃料の二重払い等から守る意味があります。
    前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
    第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
    賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。R5-12-3
    BがAとの間で甲土地の借地契約を締結しており、甲土地購入後に借地権の存続期間が満了した場合であっても、Cは、Bに対して建物を収去して土地を明け渡すよう請求できない場合がある。H19-13-3
  3. 正しい。建物の共有者であるEは民法177条にいう第三者に該当します。持分の取得も所有権の取得の一つであり、不動産の取得を第三者に対抗するためには登記が必要ですから、所有権の移転登記をしていないBは、Eに対し、持分の取得を対抗することができません(最判昭46.6.18)。
    不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法一七七条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。
  4. 正しい。F→A→Bと転々譲渡されています。FとBは前主後主の関係となり、この場合、前主であるFは177条にいう第三者に当たりません(最判昭39.2.13)。よって、Bは移転登記なくしてFに所有権を対抗することができます。
    不動産が甲乙丙と順次譲渡された場合、現在の登記名義人たる甲が丙から直接転移登記手続を求められるにあたつて、甲は民法第一七七条にいう第三者として、丙に対しその物権取得を否認できる関係にはない。
    不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。R3⑫-6-1
    Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。R1-1-3
したがって誤っている記述は[2]です。