担保物権(全31問中23問目)

No.23

物上代位に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
なお、物上代位を行う担保権者は、物上代位の対象とする目的物について、その払渡し又は引渡しの前に他の債権者よりも先に差し押さえるものとする。
平成17年試験 問5
  1. 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。
  2. 抵当権者は、抵当権を設定している不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。
  3. 抵当権者は、抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、当該建物に火災保険が付されていれば、火災保険金に物上代位することができる。
  4. 不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができる。

正解 4

問題難易度
肢114.6%
肢216.5%
肢311.7%
肢457.2%

解説

  1. 正しい。不動産の売買により生じた債権を有する者は、その不動産について先取特権を有します(民法328条)。よって、その不動産の賃料に物上代位することができます(民法304条1項)。
    例えば、AがBに土地を売った場合において、Bが売買代金を支払わない場合には、当該土地の賃料を差し押さえることができます。
    不動産の売買の先取特権は、不動産の代価及びその利息に関し、その不動産について存在する。
    先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
  2. 正しい。抵当権にも物上代位性があります。よって、賃料に物上代位することが可能です(民法372条)。
    第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
    甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。H28-4-2
    Aの抵当権設定登記があるB所有の建物の賃料債権について、Bの一般債権者が差押えをした場合には、Aは当該賃料債権に物上代位することができない。H24-7-1
    Aの抵当権設定登記があるB所有の建物が火災によって焼失してしまった場合、Aは、当該建物に掛けられた火災保険契約に基づく損害保険金請求権に物上代位することができる。H24-7-3
    普通抵当権でも、根抵当権でも、被担保債権を譲り受けた者は、担保となっている普通抵当権又は根抵当権を被担保債権とともに取得する。H15-6-3
  3. 正しい。抵当権を設定している建物が火災により焼失した場合、抵当権は消滅します。しかし、判例では債務者が受け取るべき金銭である損害保険金請求権も物上代位の対象になるとしています(民法304条1項)。
    当該建物に火災保険が付されていて、当該建物が火災によって焼失してしまった場合、Bの抵当権は、その火災保険契約に基づく損害保険金請求権に対しても行使することができる。H22-5-2
    Bが、BのCに対する将来にわたる賃料債権を第三者に譲渡し、対抗要件を備えた後は、Cが当該第三者に弁済する前であっても、Aは、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。H15-5-1
    Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは、Aは、その代金債権に対して、払渡し前に差押えをしないで、先取特権を行使することができる。H12-3-3
  4. [誤り]。留置権には物上代位性がありません。よって、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することはできません。
したがって誤っている記述は[4]です。