宅建試験過去問題 令和4年試験 問4

問4

A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権(以下この問において「本件抵当権」という。)が設定され、その旨の登記がなされた場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
  1. Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。
  2. Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6か月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。
  3. 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。
  4. BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

正解 1

問題難易度
肢155.7%
肢217.7%
肢310.4%
肢416.2%

解説

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  1. [正しい]。
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    代価弁済は、抵当不動産の所有権が売買によって移転したときに、抵当権者の主導で抵当権を消滅させる手続きです。抵当権者は、抵当不動産の取得者(第三取得者)に対して価格を提示し、その価格を第三取得者が弁済すれば、抵当権は第三取得者のために消滅します(民法378条)。第三取得者は弁済額について売主に求償をする権利を得ますが、通常は売買代金と相殺されます(民法570条)。
    抵当不動産について所有権又は地上権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。
    買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
    抵当不動産を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその代価を抵当権者に弁済したときは、抵当権はその第三者のために消滅する。H27-6-3
  2. 誤り。
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    賃借権の対抗要件を備えていない建物の借主については、競売の買受けの時から6か月間引渡しを猶予する制度がありますが、本肢では抵当権の対象が土地なので、このような保護はありません。したがって、Eは買受人Fに対する甲土地の引渡しを拒むことはできません。
  3. 誤り。抵当権が設定された土地に建物が建築された場合、抵当権者は、土地とともに建物も競売にかけることができます(民法389条1項)。建物を競売にかけるかどうかは任意なので、申し立てなければならないとする本肢は誤りです。
    抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。
    Aは、乙建物に抵当権を設定していなくても、甲土地とともに乙建物を競売することができるが、優先弁済権は甲土地の代金についてのみ行使できる。H14-6-4
  4. 誤り。
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    抵当権消滅請求は、抵当不動産の所有権を取得した者(第三取得者)の主導で抵当権を消滅させる手続きです。第三取得者が抵当権者全員に383条所定の書面を送り、申出を承諾した抵当権者に第三取得者が申出額を払い渡すことにより抵当権が消滅する制度です。
    抵当権消滅請求は、第三取得者を救済する制度であるため、主たる債務者、保証人が自身の負担を減らす目的では行使することができません。よって、主たる債務者であるBが抵当権消滅請求できるとする本肢は誤りです(民法380条)。
    主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない。
    抵当不動産の被担保債権の主債務者は、抵当権消滅請求をすることはできないが、その債務について連帯保証をしたものは、抵当権消滅請求をすることができる。H27-6-2
    抵当権の被担保債権につき保証人となっている者は、抵当不動産を買い受けて第三取得者になれば、抵当権消滅請求をすることができる。H21-6-1
したがって正しい記述は[1]です。