宅建試験過去問題 令和4年試験 問3

問3

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. 成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。
  2. 相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。
  3. 成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。
  4. 令和4年4月1日からは、成年年齢が18歳となったため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。

正解 4

問題難易度
肢112.7%
肢26.0%
肢313.5%
肢467.8%

解説

  1. 誤り。成年後見人は、後見監督人の同意を得なくても、成年被後見人の法律行為を取り消すことができます。成年後見人が後見監督人の同意を得る必要があるのは、成年被後見人に代わって、営業又は被保佐人が保佐人の同意を得なければできないとされている財産上の重要な行為を行う場合です(民法864条)。
    ※債務保証、不動産の取引、訴訟行為、贈与、相続の承認・放棄、遺産の分割、建築の請負契約など
    後見人が、被後見人に代わって営業若しくは第十三条第一項各号に掲げる行為をし、又は未成年被後見人がこれをすることに同意するには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。ただし、同項第一号に掲げる元本の領収については、この限りでない。
  2. 誤り。成年後見人は、後見監督人がいるときを除いて、成年被後見人と利益が相反する行為をすることはできません(民法860条)。成年後見人と成年被後見人がともに相続人である場合を考えると、成年被後見人の相続を放棄させることにより、成年後見人の相続分が増えることになるので、このようなケースでは成年後見人と成年被後見人の利益が相反することは明らかです。したがって、単独行為であるというだけで利益相反行為とならないとは言えません(最判昭53.2.24)。
    相続の放棄が相手方のない単独行為であるということから直ちに民法八二六条にいう利益相反行為にあたる余地がないと解するのは相当でない。
  3. 誤り。成年後見人は、成年被後見人を代理して法律行為を行う法定代理人です。保佐人は、被保佐人が行おうとする財産上の重要な行為について同意を与えること、同意を得ることなくなされた上記の行為について取り消すことを主な職務としますが、家庭裁判所の審判により、特定の法律行為についての代理権が与えられることもあります(民法876条の4第1項)。
    家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
  4. [正しい]。未成年者や破産者は成年後見人となることができません(民法847条)。成年年齢の引下げにより18歳に達すれば成年者となるので、18歳の者も成年後見人になることができます。
    次に掲げる者は、後見人となることができない。
    一 未成年者
    二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
    三 破産者
    四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
    五 行方の知れない者
したがって正しい記述は[4]です。