宅建試験過去問題 平成14年試験 問3

問3

売主A・買主B間の建物売買契約(所有権移転登記は行っていない。)が解除され、建物の所有者Aが、B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
  1. Aが、Bに対して建物をCのために占有することを指示し、Cがそれを承諾しただけでは、AがCに建物を引き渡したことにはならない。
  2. Bが建物占有中に、地震によって玄関のドアが大破したので修繕し、その費用を負担した場合でも、BはCに対してその負担額の償還を請求することはできない。
  3. Bは、占有中の建物の一部をDに使用させ賃料を受領した場合、その受領額をCに償還しなければならない。
  4. Cが暴力によって、Bから建物の占有を奪った場合、BはCに占有回収の訴えを提起できるが、CはBに対抗できる所有権があるので占有回収の訴えについては敗訴することはない。

正解 3

問題難易度
肢125.9%
肢214.3%
肢351.3%
肢48.5%

解説

  1. 誤り。売買契約の解除後、その建物に居住しているBは、一時的に建物を預かっている状態であり所有者Aに代わり間接的に建物を占有していることになります(代理占有)。Bのような占有代理人によって占有をする場合において、本人がその占有代理人に対して第三者のために占有することを命じ、それを第三者が承諾した場合には、その第三者が占有権を取得します(民法184条)。
    したがって、本人Aが占有代理人Bに対して第三者Cのために占有することを指示し、それをCが承諾すれば、Cは建物の占有権を取得します。占有権は物を自己の利益のために支配する権利ですから、占有権が移転されたことによりAはCに建物を引き渡したことになります。
    代理人によって占有をする場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。
  2. 誤り。玄関のドアの修繕は保存のための行為なので、そのために支出した費用は必要費扱いとなります。占有者は、占有物を返還する際に、占有物の返還請求権者(回復者)に対して支出した必要費の償還を請求することができます(民法196条)。よって、BはCに対して修繕費用の償還を請求することが可能です。
    占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
  3. [正しい]。Bは売買契約の解除に伴う建物返還義務があるにもかかわらず、自己のために建物を使用収益しているので、悪意の占有者となります。悪意の占有者は、占有物を使用して得た収益を占有物の返還請求権者(回復者)に償還しなければなりません(民法190条)。よって、BはDから受領した賃料をCに償還しなければなりません。
    悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
  4. 誤り。Bは占有権者ですから、Cの暴力により占有を奪われたときは「占有回収の訴え」を提起することができます。この「占有回収の訴え」は所有権(本権)に関する理由に基づいて裁判することはできないので、Cに所有権があるからという理由でBの訴えを退けることはできません(民法202条)。よって、所有権を有していても敗訴することもあります。
    なお、Cは建物の所有権を有していますが、自ら暴力によってBを追い出すことは禁止されています(自力救済の禁止)。Bが建物に居座り続けるときには、所有権に基づく建物返還請求によりBの立ち退きを求めることになります。
    占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
    2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。
したがって正しい記述は[3]です。