宅建試験過去問題 平成12年試験 問27

問27

印紙税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
  1. 建物の賃貸借契約に際して敷金を受け取り、敷金の領収書(記載金額100万円)を作成した場合、その領収書に「賃借人が退去する際に返還する」旨が記載されているときでも、印紙税は課税される。
  2. 土地の譲渡契約(記載金額5,000万円)と建物の建築工事請負契約(記載金額3,000万円)を1通の契約書にそれぞれ区分して記載した場合、その契約書の記載金額は8,000万円である。
  3. A社を売主、B社を買主、C社を仲介人とする土地の譲渡契約書(記載金額5,000万円)を3通作成し、それぞれが1通ずつ保存することとした場合、仲介人であるC社が保存する契約書には印紙税は課税されない。
  4. 土地の譲渡金額の変更契約書で、「既作成の譲渡契約書に記載の譲渡金額1億円を1億1,000万円に変更する」旨が記載されている場合、その契約書の記載金額は1億1,000万円である。

正解 1

問題難易度
肢165.1%
肢213.8%
肢36.9%
肢414.2%

解説

  1. [正しい]。敷金を受け取り、敷金の領収書を作成した場合、その領収書に「賃借人が退去する際に返還する」旨が記載されているときでも、印紙税が課されます(印紙税法通達別表第一14-3)。敷金は売上代金以外に係る金銭としての扱いとなり、将来的に返還される記載があったとしても課税対象となります。
    家屋等の賃貸借に当たり、家主等が受け取る敷金について作成する預り証は、第14号文書(金銭の寄託に関する契約書)としないで、第17号文書(金銭の受取書)として取り扱う。
    建物の賃貸借契約に際して敷金を受け取り、「敷金として20万円を領収し、当該敷金は賃借人が退去する際に全額返還する」旨を記載した敷金の領収証を作成した場合、印紙税は課税されない。H20-27-1
    建物の賃貸借契約に際して貸主であるC社が作成した、「敷金として30万円を受領した。当該敷金は賃借人が退去する際に全額返還する」旨を明らかにした敷金の領収書には、印紙税は課されない。H16-28-3
  2. 誤り。記載金額は8,000万円ではなく5,000万円です。1つの契約書に土地の譲渡契約と建物の建築工事請負契約をそれぞれ区分して記載した場合、その契約書の記載金額は両者の額のうち高い方になります(印紙税法通達24条(2))。本肢では「5,000万円>3,000万円」なので、記載金額は5,000万円です。
    一の文書に、課税物件表の2以上の号の課税事項が記載されているものについて、その記載金額をそれぞれの課税事項ごとに区分することができる場合 当該文書の所属することとなる号の課税事項に係る記載金額
    一の契約書に土地の譲渡契約(譲渡金額5,000万円)と建物の建築請負契約(請負金額6,000万円)をそれぞれ区分して記載した場合、印紙税の課税標準となる当該契約書の記載金額は1億1,000万円である。R5-23-2
    一の契約書に土地の譲渡契約(譲渡金額4,000万円)と建物の建築請負契約(請負金額5,000万円)をそれぞれ区分して記載した場合、印紙税の課税標準となる当該契約書の記載金額は、5,000万円である。H25-23-3
    一の契約書に土地の譲渡契約(譲渡金額3,000万円)と建物の建築請負契約(請負金額2,000万円)をそれぞれ記載した場合、印紙税の課税標準となる当該契約書の契約金額は、5,000万円である。H17-27-2
  3. 誤り。A・B・C各社3通分作成し、それぞれが1通ずつ保存することとした場合であっても、仲介人であるC社が保存する契約書には印紙税は課税されます(印紙税法通達19条・20条)。契約当事者以外に交付する文書は原則として課税文書に該当しませんが、不動産仲介人はその対象外となっているからです(不動産売買を媒介した者は契約当事者とみなされる)。
    売主Aと買主Bが土地の譲渡契約書を3通作成し、A、B及び仲介人Cがそれぞれ1通ずつ保存する場合、当該契約書3通には印紙税が課される。R5-23-1
    土地の売買契約書(記載金額2,000万円)を3通作成し、売主A、買主B及び媒介した宅地建物取引業者Cがそれぞれ1通ずつ保存する場合、Cが保存する契約書には、印紙税は課されない。H25-23-2
    土地の売買契約書(記載金額5,000万円)を3通作成し、売主D社、買主E社及び媒介した宅地建物取引業者F社がそれぞれ1通ずつ保存する場合、F社が保存する契約書には、印紙税は課されない。H18-27-3
  4. 誤り。契約金額の変更が記載されている契約書では、増額の場合には増額分が記載金額となり、減額の場合には記載金額のないものとなります。本肢の変更契約書は、契約金額を増加させるものに該当しますから、増額分の1,000万円が記載金額となります(印紙税法通達30条2項)。
    契約金額を変更する契約書のうち、通則4のニの規定が適用される文書の記載金額は、それぞれ次のようになるのであるから留意する。
    (1) 契約金額を増加させるものは、当該契約書により増加する金額が記載金額となる。
    (2) 契約金額を減少させるものは、記載金額のないものとなる。
    当初作成の「土地を1億円で譲渡する」旨を記載した土地譲渡契約書の契約金額を変更するために作成する契約書で、「当初の契約書の契約金額を1,000万円減額し、9,000万円とする」旨を記載した変更契約書について、印紙税の課税標準となる当該変更契約書の記載金額は、1,000万円である。R5-23-4
    「令和6年10月1日付建設工事請負契約書の契約金額3,000万円を5,000万円に増額する」旨を記載した変更契約書は、記載金額2,000万円の建設工事の請負に関する契約書として印紙税が課される。H21-24-1
    当初作成の「土地を1億円で譲渡する」旨を記載した土地譲渡契約書の契約金額を変更するために作成する契約書で、「当初の契約書の契約金額を2,000万円減額し、8,000万円とする」旨を記載した変更契約書は、契約金額を減額するものであることから、印紙税は課税されない。H20-27-3
    「令和6年5月1日作成の土地譲渡契約書の契約金額を1億円から9,000万円に変更する」旨を記載した変更契約書は、契約金額を減額するものであるから、印紙税は課されない。H13-27-2
したがって正しい記述は[1]です。