借地借家法(建物)(全27問中23問目)

No.23

貸主A及び借主B間の建物賃貸借契約に関する次の記述のうち、賃料増減請求権に関する借地借家法第32条の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
平成16年試験 問14
  1. 建物が完成した時を始期とする賃貸借契約において、建物建築中に経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当になっても、建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない。
  2. AB間の建物賃貸借契約が、Bが当該建物をさらに第三者に転貸する事業を行ういわゆるサブリース契約である場合、使用収益開始後、経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても、Bから賃料減額請求を行うことはできない。
  3. Bが賃料減額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合、賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額されることになる。
  4. Aが賃料増額請求権を行使してAB間に協議が調わない場合、BはAの請求額を支払わなければならないが、賃料増額の裁判で正当とされた賃料額を既払額が超えるときは、Aは超過額に年1割の利息を付したBに返還しなければならない。

正解 1

問題難易度
肢138.1%
肢210.0%
肢317.7%
肢434.2%

解説

  1. [正しい]。賃料増減額請求権は、建物の使用収益開始後に賃料の額が不相当になった場合に、将来に向かって賃料の増減を求めることができる権利であると解されています。よって、借主Bは使用収益の開始前に賃料減額請求を行うことはできません(最判平15.10.21)。
    建物賃貸借契約の当事者は,契約に基づく建物の使用収益の開始前に,借地借家法32条1項に基づいて賃料の額の増減を求めることはできない。
    AB間の建物賃貸借契約が、Bが当該建物をさらに第三者に転貸する事業を行ういわゆるサブリース契約である場合、使用収益開始後、経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当となっても、Bから賃料減額請求を行うことはできない。H16-14-2
  2. 誤り。建物賃貸借契約が事業を目的とするサブリース契約であっても、借地借家法の保護対象となる建物賃貸借契約である以上、サブリース業者が賃料減額請求を行うことは可能と判示されています(最判平15.10.21)。
    建物が完成した時を始期とする賃貸借契約において、建物建築中に経済事情の変動によってAB間で定めた賃料が不相当になっても、建物の使用収益開始前にBから賃料減額請求を行うことはできない。H16-14-1
  3. 誤り。賃料増減額請求について協議が調わず、裁判で処遇が確定した場合、賃料の増減額は、当該意思表示が相手方に到達した時から将来に向かって適用されることとなります(借地借家法32条3項最判昭32.9.3)。裁判確定時点からではありません。
    建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年一割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。
    借家法第七条に基く賃料増減の請求は請求者の一方的意思表示を以て足り、それが相手方に到達したときその賃料は、同条所定の事由の存する限り、爾後相当額に増減せられたものと解すべきである。
    Bが家賃減額の請求をしたが、家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは、Aは、その裁判が確定するまでの期間は、Aが相当と認める金額の家賃を支払うようにBに請求できる。H13-13-1
    Bが家賃減額の請求をしたが、家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは、その請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。H13-13-2
  4. 誤り。賃料増額についての協議中である場合、借主(被請求者)は裁判確定時まで相当と認められる額(契約で定めた賃料等)の支払いで足ります(借地借家法32条2項)。本肢は「請求額を支払わなければならない」としているので誤りです。
    建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年一割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。
したがって正しい記述は[1]です。