家族法(全31問中31問目)

No.31

被相続人A、相続人B及びC(いずれもAの子)として、Aが遺言をし、又はしようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
平成12年試験 問10
  1. Aは、遺言をもって、第三者Dに遺言執行者の指定を委託することができる。
  2. Aは、「Aの財産をすべてBに遺贈する。CはBに対して遺留分の侵害額請求をしてはならない」旨の遺言をして、CをAの相続から排除することができる。
  3. Aが、「Aの甲土地をBに相続させる」旨の遺言をした場合で、その後甲土地を第三者Eに売却し、登記を移転したとき、その遺言は取り消されたものとみなされる。
  4. Aは、「Aの乙建物をCに相続させる」旨の遺言をした場合で、Bの遺留分を害しないとき、これをC単独の所有に帰属させることができる。

正解 2

問題難易度
肢110.7%
肢274.1%
肢39.3%
肢45.9%

解説

  1. 正しい。遺言者は、遺言によって遺言執行者を指定したり第三者に遺言執行者の指定を委託したりすることができます(民法1006条)。遺言執行者とは、相続人に代わり相続財産の管理や相続内容を執行する権限を持つ者です。
    遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
  2. [誤り]。Cは被相続人の子ですので遺留分の権利者です。民法の遺留分に関する規定は強行規定と解されているので、遺言によって遺留分侵害額の請求を排除することはできません。ただし、遺言が無効になるわけではないので注意が必要です。
  3. 正しい。被相続人が甲土地を売却したことにより、甲土地をBに相続させる遺言は実現不可能になります。この事例のように被相続人が遺言内容に抵触する生前処分を行った場合、その遺言の部分は取り消されたとみなされます(民法1023条)。
    前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
    2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。
    適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。H17-12-3
  4. 正しい。相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があった場合は、被相続人が遺産分割の方法を指定したとみなされ、指定された相続人が遺産分割協議を経ないで確定的に当該遺産を取得します(最判平3.4.19)。
    一 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言は、遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたものと解すべきである。よって、遺留分の侵害がなければBは乙建物を単独で取得することになります。
    二 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
    Aが生前、A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には、特段の事情がない限り、遺産分割の方法が指定されたものとして、Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。H25-10-2
    法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合、Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合、Bは遺留分権利者とならない。H17-12-4
したがって誤っている記述は[2]です。