家族法(全31問中1問目)

No.1

次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。
(判決文)
遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。
令和5年試験 問1
  1. 遺産である不動産から、相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権は、遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産が帰属することになった相続人が相続開始時にさかのぼって取得する。
  2. 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属し、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
  3. 遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
  4. 遺産である不動産が遺産分割によって複数の相続人のうちの一人に帰属することとなった場合、当該不動産から遺産分割後に生じた賃料債権は、遺産分割によって当該不動産が帰属した相続人が取得する。

正解 1

問題難易度
肢167.2%
肢27.6%
肢310.6%
肢414.6%

解説

  1. [誤り]。判決文では「各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得する」と説明されています。遺産分割の遡及的効果により、ある相続人が相続開始時から不動産を所有していたことになったとしても、相続開始から遺産分割まで生じた賃料債権は、各共同相続人の固有財産のままということです。
  2. 正しい。判決文の冒頭に記載されているように、相続人が複数の場合、遺産分割前の相続財産は共同相続人の共有に属し、その共有持分は各相続人の法定相続分によります(民法898条)。また、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(民法899条)。
    共有物から生じた収益は共有持分の割合によって各共有者に帰属しますから、遺産分割前の相続財産から生じた賃料債権は、相続分に従って各共同相続人が取得することになります。
    相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
    2 相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする。
    各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
    Bが死亡した場合、甲建物につき法定相続分を有するFは、甲建物を1人で占有しているAに対して、当然に甲建物の明渡しを請求することができる。H24-10-2
  3. 正しい。遺産分割協議で相続財産の帰属が確定した場合、その効力は、相続開始の時にさかのぼって生じます。つまり、遺産分割によって財産を取得した場合、相続開始時にその財産を取得したことになるということです。しかし、共有状態の相続財産の持分が第三者に譲渡された場合などは、その第三者の権利には影響を与えません(民法909条)。
    遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
    遺産の分割は、共同相続人の遺産分割協議が成立した時から効力を生ずるが、第三者の権利を害することはできない。R1-6-4
  4. 正しい。判決文で確定的に取得すると説明されているのは、相続開始から遺産分割までの間に生じた賃料債権です。遺産分割で単独の所有とされた場合、その後に生じた賃料債権は、遺産分割で当該不動産を取得した者に帰属します(民法89条2項)。
したがって誤っている記述は[1]です。

参考URL: 最判平17.9.8
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52401