代理(全18問中5問目)
No.5
代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。平成29年試験 問1
- 売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、相手方からその売買契約を取り消す旨の意思表示を受領する権限を有する。
- 委任による代理人は、本人の許諾を得たときのほか、やむを得ない事由があるときにも、復代理人を選任することができる。
- 復代理人が委任事務を処理するに当たり金銭を受領し、これを代理人に引き渡したときは、特段の事情がない限り、代理人に対する受領物引渡義務は消滅するが、本人に対する受領物引渡義務は消滅しない。
- 夫婦の一方は、個別に代理権の授権がなくとも、日常家事に関する事項について、他の一方を代理して法律行為をすることができる。
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正解 3
問題難易度
肢18.3%
肢28.5%
肢369.3%
肢413.9%
肢28.5%
肢369.3%
肢413.9%
分野
科目:1 - 権利関係細目:3 - 代理
解説
- 正しい。売買契約の締結の代理権には、特段の事情がない限り、契約の相手方から取り消しの意思表示を受領する権限を含むとされています(最判昭34.2.13)。代理人がした契約であれば、その代理人に対して契約取消しの意思表示も行っても有効であるということです。
売買契約締結の代理権を授与された者は、特段の事情がないかぎり、相手方から、旧民法第八八七条に基く当該売買契約取消の意思表示を受ける権限をも有するものと解するのが相当である。
- 正しい。委任による代理人(任意代理)の場合、①本人から許諾を得たとき、または②やむを得ない事情があるときに限り、復代理人(代理人の代理人)を選任することができます(民法104条)。やむを得ない事情があるときにも復代理人の選任が可能です。
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。
- [誤り]。委任による代理人には、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭等を委任者に引き渡す義務がある一方、復代理人は、代理人だけなく本人に対して代理人としての義務を直接負うので、復代理人には委任者である代理人及び本人への引渡し義務が併存することになります(民法646条1項民法106条2項)。
この点が争われた裁判では、復代理人が、代理人に受領物(ここでは金銭)を引き渡したときは、本人に対する引き渡し義務をも消滅するとしています(最判昭51.4.9)。受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。
- 正しい。夫婦は日常の家事に関する法律行為(共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為)について連帯責任を負うとされていますが、この規定は実質的に、夫婦が日常家事に関する事項について他方を代理する権利を有する状態をも規定しているとされています(民法761条最判昭44.12.18)。したがって、夫婦であれば代理権授与契約がなくても、他方を代理して日常家事に関する法律行為をすることが可能です。
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
民法七六一条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである。
AとBとが夫婦であり契約に関して何ら取り決めのない場合には、不動産売買はAB夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内にないとCが考えていた場合も、本件売買契約は有効である。(H16-2-1)
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