所有権・共有・占有権・用益物権(全34問中3問目)
No.3
相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。令和5年試験 問2
- 土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。
- 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。
- 相隣者の一人は、相隣者間で共有する障壁の高さを増すときは、他方の相隣者の承諾を得なければならない。
- 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。
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正解 1
問題難易度
肢159.4%
肢29.7%
肢326.1%
肢44.8%
肢29.7%
肢326.1%
肢44.8%
分野
科目:1 - 権利関係細目:5 - 所有権・共有・占有権・用益物権
解説
- [正しい]。土地の所有者は、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知することにより、境界付近における障壁、建物その他工作物を築造、収去、修繕するために必要な範囲内で隣地を使用することができます。ただし、住家に立ち入る際には居住者の承諾が必要です(民法209条1項)。
土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り土地の所有者は、境界において障壁を修繕するために必要であれば、必要な範囲内で隣地を使用することができる。(H21-4-1) - 誤り。催告をしたのに相当の期間内に切除されなかった場合には、枝を自ら切り取ることができます。
土地の所有者は、隣地から木の枝が境界線を越えて伸びてきた場合には、竹木の所有者に請求して切除してもらうのが原則です。枝を切ってしまうと竹木の生育に影響があるからというのがその理由です。ただし、①竹木の所有者に催告しても相当な期間内に切除しないとき、②竹木の所有者が所在不明なとき、③急迫の事情があるときは、自らこれを切り取ることができます(民法233条1項・3項)。隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
…
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。土地の所有者は、隣地から木の枝が境界線を越えて伸びてきたときであっても、自らこれを切断できることはない。(H16-7-3) - 誤り。境界線上の障壁が共有となっている場合、各相隣者は、単独で壁の高さを増す工事をすることができます。このとき相手方の承諾は要りません。壁の高さを増す工事はプライバシーの確保のために行われることが多く、隣人からの承諾を条件とするとプライバシー権の保護に支障を来すためです。一方、障壁を低くする場合には当事者全員の同意が必要です(民法231条)。
相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。ただし、その障壁がその工事に耐えないときは、自己の費用で、必要な工作を加え、又はその障壁を改築しなければならない。
2 前項の規定により障壁の高さを増したときは、その高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する。 - 誤り。自由に選んで通行できるわけではありません。
ある土地が他の土地に囲まれて公道に通じない場合、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を通ることができます(民法210条1項)。この法律上当然に認められる通行権を「囲繞地(いにょうち)通行権」と言います。ただし、必要かつ最も損害が少ない部分を選んで通行しなければなりません(民法211条1項)。他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
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